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歴史修正主義

釈明史観主義の欺瞞

 歴史修正主義(大辞林による)
 
ある歴史的事象について定着している評価を一面的とし、その見直しを要求する理論的態度。

 フランクリン・デラノ・ルーズベルト(FDR)や、ウィンストーン・レナード・スペンサー・チャーチルを弁護する歴史家の特徴は、彼らの発した言葉を隠し、歴史家からそのような事実が指摘されると、「釈明」に終始する。
 ハーバート・フーバー大統領は、「裏切られた自由」(渡辺惣樹訳、草思社)のなかで、そのような歴史家を「釈明史観主義者(apologist)」として非難している。

 「歴史修正主義」の嚆矢となったのは、チャールズ・ビーアドの「ルーズベルト大統領と1941年の戦争勃発ー外観と実体」で、1948にその初版が刊行された。しかし、「釈明史観主義者」の反発は凄まじく、事実上禁書扱いになった。冷戦終了後、歴史学会がやや落ち着きを取り戻した2003年、初版から55年経ってやっと再版される。

 日本で「ルーズベルトの責任」(上・下)の翻訳版が出たのはさらに遅れ、日米開戦70年を機に藤原書店から発刊された。私の手元の初版本の発行は、2012年1月30日である。

 この大部な著作を、ビーアドは次の言葉で締めくくっている。
 
アメリカ共和国は、その歴史において、合衆国大統領が公に事実を曲げておきながら、密かに外交政策を遂行し、戦争を開始する制約のない権力を有する、という結論に達した。
 アメリカ合衆国の父、ジェームズ・マディソンは百年以上前、アメリカの政治は1930年ごろに試練の時を迎えるだろう、と予言した。
 マディソンが予見した状況そのものではないものの、試練はまさに到来した。そしてわれわれの共和国をシーザーから守ってくれる神はいないのであるー
 〔1〕参照

 「釈明史観主義」の凄まじさの一例を上げておこう。
 日本で翻訳版が出る前の平成5年の秋、ワシントンDCの米国国防大学に留学していた太田文雄氏(防衛省情報本部長を最後に退官)は、日米戦争の起源を主題としたセミナーを受講した。
 「日本悪玉論」が展開され、戦争の原因を日本の満州侵略にあるという講義だった。後の自由討議の中で、太田氏は定説と異なるビーアドの「ルーズベルトの陰謀」という解釈があることを述べた。しかし、教官は「特定の歴史学者の意見を根拠にして持論を展開すべきではない」といって、太田氏の発言を封じてしまったという。
 アメリカですらかくのごとし、いわんや日本においてをや。
 〔2〕参照

 日米戦争は、第二次世界大戦のムーブメント中で見ないと何も見えない。加えて、ホロコーストのビジュアルイメージが強烈であるため、どうしても切り取りしてしまう。
 第二次世界大戦の原因は、ベルサイユ体制の不条理(ドイツに対する過酷な賠償金の請求等)であり、ポーランドの独立を保障をしたチェンバレンの愚策であり、ポーランドの頑なな対独外交であり、FDRの日本嫌い(黄禍論)だ。

 我々は、どうしても現代の目で歴史を見てしまう。
 1939年9月の段階では、ホロコーストは米英で広く知られていたとは言い難い。ドイツに占領されたポーランドやソビエトで、多くのユダヤ人が殺されているらしいという情報が本格的にもたらされたのは1941年末から1942年初めのことである。

 釈明史観主義ではベルサイユ体制の不条理を等閑して、ベルサイユ体制と国際連盟を破壊した全体主義国家(日独伊)による他国の侵略が原因だという。敗戦国を一方的に断罪したニュールンベルク裁判と東京裁判の正当性を維持するため、「釈明史観主義」は「歴史修正主義」を排除する。
 〔3〕参照

 参考資料
 「東京裁判」ブレイクニー弁護人の発言より
 五月十四日、管轄権に関する動議で法定が揺れているさ中に、東京裁判で最も注目され、そして歴史の谷間に追いやられていたブレイクニー弁護人の爆弾発言が生まれた。

 国家の行為である戦争の個人責任を問ふことは法律的に誤りである。なぜならば、国際法は国家に対して適用されるものであつて、個人に対してではない。個人による戦争行為といふ新しい犯罪をこの法廷で裁くのは誤りである。

 戦争での殺人は罪にならない。それは殺人罪ではない。戦争が合法的だからです。つまり合法的人殺しなのです。殺人行為の正当化です。たとひ嫌悪すべき行為でも、犯罪としての責任は問はれなかつたのです。

 キッド提督の死が真珠湾爆撃による殺人罪になるならば、我々は広島に原爆を投下した者の名を挙げることができる。投下を計画した参謀長の名も承知してゐる。その国の元首の名前も我々は承知してゐる。彼等は殺人罪を意識してゐたか。してはゐまい。我々もさう思ふ。

 それは彼らの戦闘行為が正義で、敵の行為が不正義だからでなく、戦争自体が犯罪ではないからである。何の罪科で、いかなる証拠で、戦争による殺人が違反なのか。原爆を落とした者がゐる!この投下を計画し、その実行を命じこれを黙認した者がゐる!その者達が裁いてゐるのだ!

 この件は英文の速記録には載せられてある。・・・この特筆すべき挿話も、昭和五十七年までは一般に知られることのないままに歴史の行間に埋没してゐたわけである。
 小堀桂一郎編「東京裁判日本の弁明」却下未提出弁護資料抜粋 講談社学術文庫 2002.12.20 
23~24頁より
 マッカーサー証言とブレイクニ発言

 参考書籍等
 〔1〕 開米潤監訳 チャールズ・オースティン・ビーアド著 「ルーズベルトの責任(下)」㈱藤原書店 2012.1.30発行
 〔2〕 小堀桂一郎著「歴史修正主義からの挑戦」㈱海竜社 2014.9.26発行
 〔3〕 渡辺惣樹著「戦争を始めるのは誰か」㈱文藝春秋 2017.1.20発行



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