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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

日本のエネルギー政策

中東依存によるリスク

 「米、有志連合構想で協力呼びかけ ホルムズ海峡警護 」
 米政府は19日、国務省で日本を含む各国外交団を招いた会合を開き、中東のホルムズ海峡周辺を航行する民間船舶の安全確保に向けた有志連合構想について説明した。船舶の護衛を各国に委ねる方針を示し、各国に艦船派遣や資金拠出を求めたとみられる。25日にフロリダ州タンパで2回目の会合を開き、詳細を説明する予定だ。
 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO47574290Q9A720C1000000/



 

 原油の中東の依存度は88%である。脆弱な状況は今後強まることがあっても緩和されることはない。

 再生可能エネルギーの課題
 
気は大量に貯めることが難しいので、使われる電気と常に同じ量を発電させるために、出力が変化しない原子力発電や、比較的容易に出力を変化できる火力発電、水力発電などの各電源を組み合わせてきめ細かく調整し、バランスをとっています。

 安定的な供給・環境問題・発電コストといったそれぞれの側面で、各発電方法には様々な長所と短所があります。そのために、火力・水力などの発電、原子力発電、再生可能エネルギーによる発電をバランスよく組み合わせ、それぞれの特徴を最大限に活用した「エネルギーミックス」が重要となってきます。

 https://www.kepco.co.jp/energy_supply/energy/newenergy/about/task.html

 

 現在の再生可能エネルギーは「石油の代替エネルギー」にはならない。再生可能エネルギーを崇拝する人達は、なぜか原発を忌避して「防衛」までも否定する。中東のリスクを一体どのように考えているのだろうか。

 1981~1988年のイラン・イラク戦争後、アラビア半島に二つのパイプラインが建設された。サウジアラビアを横断し紅海までのものと、UAEの首都アブダビからオマーン湾に繋がる二つである。
 輸送量は、前者が500万バレル/日、後者が150万バレル/日であり、ホルムズ海峡の輸送量・1700万バレル/日に比べれば半分以下だ。ホルムズ海峡に異変があれば、大混乱になる。

 では、シェールオイルの代替は可能か。
 シェールオイルは、ストックホルダー重視(株主資本主義)のため投資効率が優先され、現在は利上げによる資金調達コストの上昇により、油井の新規生産が抑制されている。
 米国の石油掘削装置(リグ)の稼働数も800基弱と大幅に減少して、直近の生産量は1220万バレル/日となっている。

 とはいえ、シェールオイルは、採掘済みだが水圧破砕等の処理をしていない未完成の井戸がある。これらは、意図的に採掘だけで止めているもので、水圧破砕をすればオイルが回収できる。油価の状況によって、いつでも供給を増やせる余力があり、在庫のようなものだ。
 油価は、短期的には原油価格が上昇すれば増産に転じ、50万ドル/バレルに振り戻されるだろう。状況によってオーバーシュート(低下)するかもしれない。
 とはいえ、長期的には、スイートスポット(生産効率が高く、低コストの油井)の発見率が低下していると思われ、コスト増の可能性がある。

 エジプトとスーダンの国境、シリア、イラク及びヨルダン等の国境が直線なのは、英仏の植民地政策(サイクス・ピコ協定)によるもので、現在の中東の混乱はサイクス・ピコ協定を淵源としているといわれている。しかし、中東はそれほど単純ではないようだ。

 中東は、トルコ語のトルコ人、アラビア語のアラブ人、ペルシャ語のイラン人がいる。同じイスラム教でも、シーア(党派を意味する)派と、スンニ(慣行を意味する形容詞であり、スンナは名詞)派があり、多数派がスンニ派であるけれど、これも二項対立で割り切れるものではないようだ。
 特に中東の縮図ともいえるレバノンは、多様なエスニシティがコミュニティを形成する宗派主義の政治が行われている。

 加えて、イスラエルの台頭が新たな中東の火種になっている。”There is an elephant in the room"という表現があるそうだ。
 議論の対象となっている事柄に、多大な影響を及ぼす要因があるにも関わらず、その要因に触れることが議論の進行に支障をきたすため、あえて、そのことに触れないという暗黙の合意を意味するそうだ。この、巨大な透明の象が「イスラエル」という要因である。

 イスラエルは、サイバー防衛やインテリジェンス、特にイスラエルの治安やテロの情報は防衛に不可欠といわれる。イスラエルの台頭が不測の事態を招き、中東に新たな危機をもたらすかもしれない。

 2011年チュニジアを発端とする「アラブの春」は中東をさらに複雑にして、池内恵氏によれば、「まだら状の秩序」の時代に入ったという。

 外部の勢力も中東の問題の一部となり、中東の混乱を永続化させる主体となっている。シリアやイラクやイエメンやリビアの紛争は、終わりが見えない。

 パリ協定発効による脱化石燃料の流れの中で、原発はどうしても必要だ。日本が「有志連合」に加入すれば、イランとの関係も変わる。イランを考えれば、「日本の単独警護」もあり得るだろう。シーレーンも含め、日本の長期的なエネルギー戦略が望まれる。

 イスラム教については触れる余裕がないけれど、「西洋の自死」の最後でも簡単に触れている。尚、飯山陽氏の「イスラム教の論理」新潮新書がとても分かり易く纏められている。


 参考書籍等
 [1] 池内 恵著「シーア派とスンニ派」新潮選書 2018.5.25発行
 [2] 「原油供給の主役となったシェールオイルに異変」藤 和彦
    https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/56916
 [3] 「イスラエル中東地域・国際政治への影響力の高まり」池内 恵
    https://www.jccme.or.jp/11/pdf/2019-06/josei02.pdf


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