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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

「上からの演繹」による歴史観

現代の目で見る歴史観の危うさ

 

 GHQ民間情報局提供の「太平洋戦争史」が1945年12月8日から17日まで、10回わたり新聞に掲載され、翌年には「太平洋戦争史」の翻訳版が出版されてベストセラーになりました。以降強制され、ほどなく私たちは「大東亜戦争」を「太平洋戦争」と呼称するようになりました。

 日米対立の起点を満州事変とする「GHQ太平洋戦争史観」によるか、日清日露戦争後の繋がった歴史観によるかで歴史解釈はまったく異なります。

 満州事変で切ってしまえば、列強の帝国主義による植民地支配、世界恐慌後のイギリス、フランス、オランダ、アメリカ及びロシアによるブロック経済政策が等閑され、帝国主義による生存競争という大切な要因が剥落してしまうのです。逼迫する外圧の中で、資源のない狭隘な国土と人口増加、世界恐慌及び金本位制等による不況のなか、貧困に喘いだ当時の「日本人の気分」が忖度できなくなります。

 そればかりか、日露戦争による有色人種の勝利が、人種差別を建国の基盤とするアメリカに衝撃を与え、あまつさえ、戦艦を無傷のまま残した圧倒的勝利であったということが、西進するアメリカの脅威となったことも埒外になります。
 古くは紀元前480年のサラミスの海戦、1571年のレパントの海戦及、1588年のアルマダの海戦におけるイスパニアの無敵艦隊の敗北及び1805年トラファルガーの海戦で敗れたフランスに見られるように、海戦の勝敗によって時代は大きく動いてきたのです。20世紀初頭の太平洋海域の軍事力は明らかに日本がアメリカより優位に立っていました。
 太平洋の彼方からアメリカのオレンジ計画が始動し、ワシントン軍縮会議、日英同盟破棄及び日本封じ込め等のアメリカの恐るべき戦略が実行されていきます non  そして大東亜戦争開始と時を同じくして、OSS(戦時情報局)による日本占領計画が始動し、日本をいかに軍事的に壊滅させ、いかに戦後社会を攪乱するか等の構想が練られ、GHQの占領政策に引き継がれるわけです。 歴史を「戦前」と「戦後」に分断すれば以上のような背景が見えなくなり、時代の気分が全く分からなくなります。歴史とは歴史的事実を渉猟して、その時代の気分を忖度し「歴史的価値」を共有することでしょう。一つの事実をめぐって「歴史的価値」と「絶対的価値」の混同があってはいけないのです。
 例えば、幕末における蘭学者の業績は歴史のなかに埋もれてしまって、現代の目で見れば「絶対的価値」は幼稚だけれど、当時における価値(「歴史的価値」)は甚だ高いものでした。この二つを混同すると歴史の真実が見えなくなってしまいます。

 
歴史の事象を判断するには、まずそのおかれた条件の中に入って一起一伏をともに歩いてあとづけて見るべく、それが保守であったか進歩であったかというような判断は、その歴史の外の絶対的価値をあてはめてはかることはできない。

 そして、当時を生き、一高の学窓から歴史の目撃者となった竹山道雄は次のようにいっています。
 
日本は世界の近代史の中で、はなはだ特殊な地位にあって、はげしい変化転身をした。われわれの経験した歴史の過程は、その特別な国の一回限りのもので、これを硬い類型的な図式の中におしこむことはできない。体制化・図式化は、それによって「自分は理解しえた」という自信を生むための、安易な方法である。現代を動かすものはつねに現代的な契機だと思うが、それがここではきわめて複雑な経緯をたどった

 
歴史を解釈するときに、まずある大前提となる原理をたてて、そこから下へ下へと具体的現象の説明に及ぶ行き方は、あやまりである。歴史を、ある先験的な原理の図式的な展開として、論理の操作によってひろげてゆくことはできない。このような、「上からの演繹」は、かならず間違った結論へと導く

 「上からの演繹」は、福田恆存がいう「現在の目で過去をみてはいけない」とも通底します。
 
歴史家が最も自戒せねばならぬ事は過去に対する現在の優位である。吾々は二つの道を同時に辿ることは出来ない。とすれば、現在に集中する一本の道を現在から見遥かし、ああすればよかつた、かうすればよかつたと論じる位、愚かなことは無い。

 1975年6月に、OECD科学技術政策委員会が日本の社会科学の脆弱さを指摘しましたが、残念がら現在も変わっていません。竹山道雄はこの状況を、日本の社会科学は「宗教化している」と指摘しています。


 参考文献
 〔1〕竹山道雄著「昭和の精神史」中央公論新社 2011.1.25
 〔2〕福田恆存著「言論の自由といふ事」新潮社 1973.3.10
    W章 近代日本の運命 合鍵を持った歴史観
 



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