平和もリアリズムなのである
「悪のない状態」は理想とはなりえない

数か月前に同様のグラフを作ったが、その時は直近で日経平均と為替相場が逆相関になっていた。再確認のためタームを長くしたのが上記のグラフである。何らかの事情で異様な状況になることがある。その時は、冷徹に現実を見極めることが大切であろう。
中小企業の場合には、すべてが自己責任に帰着するため判断を誤れば取り返しがつかない。稲盛和夫氏が会社を経営し、又は一人の社会人として働くときに、必要な原理原則を明示してくれているので紹介しよう。経営者であれば、一言一句が身に染みるだろう。
1 事業の目的、意義を明確にする
2 具体的な目標を立てる
3 強烈な願望を心に抱く
4 誰にも負けない努力をする
5 売上を最大限に伸ばし、経費を最小限に押さえる
6 値決めは経営
7 経営は強い意思で決まる
8 燃える闘魂
9 勇気を以て事に当たる
10 常に創造的な仕事をする
11 思いやりの心で誠実に
12 常に明るく前向きに、夢と希望を抱いて素直な心で
〔1〕
次元は異なるけれど、経営者と同じような立場にいるのが政治家である。安倍晋三元内閣総理大臣も次のような言葉を残されている。
中曽根元総理大臣からの教唆という書き出しで、「総理大臣というのは一回弱気になったらもう駄目だ、自分が正しいと確信がある限り、常に間違ってないんだという信念で行け」と仰っていた。「常に前方から強い風が吹いてくる。それに向っていくという信念があって、初めて立っていられる」と最初に言われました。そうなのかなと思ったら、実際そうだった。
〔2〕
経営者であれば、「我が意を得たり」という思いだろう。政治も、経営もリアリズムである。そして、「平和」もまたリアリズムなのである。国際関係論では平和は二つの戦争の間に介在する騙し合いの時期をさす。
福田恆存は、「日本を思う」で以下のように述べている。
私といへども文句なしに平和を愛好し、一日も早く平和の安定した状態がくることを望んでおります。が、よく考えてください。平和論者の考へる平和といふものは、戦争のない状態、近い将来に戦争の危険がありさうもない状態を意味します。いはば、マイナスとしての悪の欠如してゐるゼロの状態にすぎず、積極的なプラスとしての理想は、平和論によってはなにも打ちだされてをりません。死のない状態といふのは、それだけで、健康の喜びや強力な生の歓喜を意味しはしません。それは理想とはなりえない。思想とはなりえないのです。
因みに「大辞林」によると、リアリズムとは「現実主義、写実主義、実在論、実念論に同じ」と記されている。peaceの語源はラテン語のpaxであり、paxには「戦争と戦争の間」、「停戦期間」という意味がある。
参考書籍等
〔1〕「生きる力」稲盛和夫著 ㈱小学館 2020.11.11発行
〔2〕「安倍晋三回顧録」 安倍晋三著 中央公論新社 2023.3.10発行
〔3〕「日本を思ふ」福田恆存著 ㈱文藝春秋 1995.5.10発行
