第三の戦後
事なかれ主義
━厚生労働省「新型コロナウイルス感染症の現在の状況と厚生労働省の対応について」━より作成
R3.1.1~R3.9.24// 右軸の「死者数÷陽性者数」は、累積値の日ごとの割合(%)
「大辞林」によると、リアリズムは「理想やたてまえにこだわらず、現実に即応して事を処理しようとする態度」とある。
しかし、日本では「事なかれ主義」ともいう。
もともと日本では、「言葉よりまず実行」といわれ、言語活動を軽視する傾向がある。新井白石の「東雅(とうが)」の序論によると、漢字が渡来した時に文字の便利さを知った日本人は、漢字を日本化して使うことを思いつき、仮名を発明して漢字と併用するようになった。以来、文字そのものより、「詞言の間」を重視する習慣が生まれ、書かれた文字を軽視するようになった。
また、漢字の流入以前の古代の日本人には言霊信仰があり、言葉の神秘的な力への信仰によって、重要なことはあえて口にしないという寡黙尊重の気風を産み出していた。
しかし、時代はプロパガンダを競う宣伝戦に突入していく。日露戦争の後、ポーツマス講和会議前後のアメリカ世論の動向でも、日本は戦争に勝ったがプロパガンダでは負けたといわれる。
昭和20年9月14日に同盟通信社が業務の全面停止を受け、9月19日には「朝日新聞」が「プレス・コード」にふれて発売禁止令を受けた時も、ポツダム宣言違反として抵抗することもなかった。この時、「事なかれ主義」で占領軍に屈したことが、戦後の日本人の精神に歪みを残した。
その朝日新聞を筆頭に、首相の靖国参拝について近隣諸国のクレームがある度に近隣諸国に同調する。国のために戦い、尊い命を犠牲にされた英霊に尊崇の念を示すことをメディアが否定的に報じ、そのようなメディアを支持する国民まで現れるようになった。
「神道指令」によって神道を抑圧排除して、二十条を作り、
第二十条 信教の自由は、何人に対してもこれを保障する。いかなる宗教団体も、国から特権を受け、又は政治上の権力を行使してはならない。
② 何人も、宗教上の行為、祝典、儀式又は行事に参加することを強制されない。
③ 国及びその機関は、宗教教育その他いかなる宗教的活動もしてはならない。
検閲官は「検閲はしてはならない」といい、二十一条を作った。
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
② 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
真に脅威を取り除くには敗戦国国民の精神に自分たちの過去への嫌悪の念を植えつけると同時に戦うこと一般への忌避の気持ちを育て、しかもそれが勝者の戦後処理の政策として押し付けられたのではなくて敗者の自発的選択として為されたようにする。
勝者への復讐心を取り除くためには、勝者は敗者に対して寛大だという印象を与え、思想改造を強制する場合も、それが勝者による強制だという印象を薄めて敗戦国国民の自発的な自己批判の形をとらせるのがよい。
戦勝国から強制されたとなれば、占領の終結と同時に元に戻ってしまうが、自発的変身だと信じ込ませておけば、より長期的な効果が期待できるからである。
この精神的武装解除がかつてなかったほど巧妙に実施された典型的な例が日本の戦後であると思う。したがって日本の戦後は従来のどんな戦争の戦後と異質ないわば近代史における第三の戦後であり、そのエッセンスは思想改造の一語に要約できよう。
〔1〕365~366頁
朝日VS.産経という構図は、単純に「進歩」か「保守」か、あるいは共産主義か自由主義かといった対立軸を示すだけでなく、アメリカにとっては、産経は反共の防波堤、朝日は日本の国家主義復権の防波堤になるということでそう悪くない対立なのです。
〔2〕70頁
参考書籍等
〔1〕「敗者の戦後」入江孝則著 文春学芸ライブラリー 2015.12.20発行
〔2〕「反日メディアの正体」上島喜郎著 経営科学出版 2021.3.5発行