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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

「自由と平等」という欺瞞

時代の転換期-2

 日本国憲法
 第三章 国民の権利及び義務
 
第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、「自由」及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
 
第十四条 すべて国民は、法の下に「平等」であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 日本国憲法はワイマール憲法によく似ているといわれる。日本国憲法がC・ケーディス等のユダヤ人によって作られたように、ワイマール憲法も内相のヒューゴ・プロイス以下三名のユダヤ人によって作られたのである。

 ワイマール憲法は中世以来差別を受けてきたユダヤ人の願いが込められ、差別を撤廃して平等を主張している。そのために、フランス革命の「自由」と「平等」の概念を高らかに謳った。
 とはいえ、18世紀の社会と20世紀の社会ではその成熟度が全く異なる。未成熟な社会で素直に受け入れられた概念が、成熟社会では全く同じ概念として受け入れられるとは限らない。
 ワイマール憲法下の成熟社会では、「自由」と「平等」の二つの概念の「非両立性」によって、矛盾・混乱が増大していった。現在の日本の分断を見ればいいだろう。
 「自由」と「平等」の「非両立性」をドイツ国民が見抜いた結果、20世紀のドイツではナチズムが台頭したのである。

 最近、イスラエルの政治哲学者のシオニスト(ユダヤ民族主義者)であるヨラム・ハゾニー氏の「ナショナリズムの美徳」(庭田よう子訳)を読んだ。
 【巻頭解説】不寛容な「リベラリズム」、多様性を尊重する「国民国家」:中野剛志氏、【巻末解説】グローバリズムを乗り越えるために必読:施光恒氏、以上、いずれも秀逸で保守主義について改めて考えさせられた。

 第18章 国民国家からなる秩序の諸原則
 
存続可能な独立した国民国家からなる秩序を維持し、強化するためには、政治家の側に多大な巧妙さと献身が求められる。この点で、国民国家制度は、自由政府に必要とされるその他の制度、たとえば、三権分立や個人の財産権の維持と似ている。

 このような制度は、最大限の警戒とその保持と改善への不断の関心によらなくては、維持することはできない。当然ながら、ある制度が設立された理由がもはや知られなくなった場合には、そのような警戒と配慮はますます困難になる。

 わたしたちの世代は、独立した国民国家からなる秩序の美徳を教えられず、うっすらとした記憶しかないので、普遍帝国の単純さと壮大さ、いわゆる道徳的善良さとされるものへの回帰を求める声は、ますます執拗に、より切迫したものになっていくだろう。

 だが、わたしたちの自由が私たちにとって重要である限り、それを確保するしか術はない。わたしたちの先祖が築き、貴重な遺産としてわたしたちに残した国民国家を維持し、強化する困難な作業に従事しなくてはならない。
 〔2〕218・219頁

 リベラリズムとは、寛容の精神を称揚しながら均質な世界を前提としているのであって、独自の文化伝統を排除するものである。ハゾニー氏がいうように、自由を確保するには国民国家を維持し、強化する困難な作業に従事しなければならない。
 トランプ大統領の登場、イギリスのEU離脱及びフランスの「黄色いベスト運動」の背後にある思想だが、日本ではどうだろう。
 伝統や文化を破壊し、均質な社会を目指してはいないか。


 参考書籍等
 〔1〕モルデカイ・モーゼ著 久保田正男訳 あるユダヤ人の懺悔「日本人に謝りたい」 ㈱日新報道 2011.8.11発行  
 〔2〕ヨラム・ハゾニー著 庭田よう子訳 「ナショナリズムの美徳」 東洋経済新報社 2021.4.8発行   



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