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開いた瓶の蓋

ニクソン・ショック

 ポンペオ演説ににじむ「対中政策」後悔の端緒/青沼陽一郎
 https://toyokeizai.net/articles/amp/365905
 
「習近平総書記は、破綻した全体主義のイデオロギーの真の信奉者だ」と断言。「われわれは両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違いをもはや無視することはできない」と、中国の共産主義に批判の矛先を向けた。さらに、アメリカの歴代政権が続けてきた、一定の関係を保ちながら経済発展を支援し、ひいては中国の民主化を促す「関与政策」を「失敗」と断じた。

 アメリカも対中戦争を考えていない?――ポンペオ演説とエスパー演説のギャップ/遠藤誉
 https://news.yahoo.co.jp/byline/endohomare/20200729-00190671/
 
何よりも注目すべきは、「(中国共産党の)習総書記は破綻した全体主義のイデオロギーの信奉者だ」と、習近平を名指しで非難したことだ。さらに「中国の共産主義による世界覇権への長年の野望を特徴付けているのはこのイデオロギーだ。我々は、両国間の根本的な政治的、イデオロギーの違いをもはや無視することはできない」とも述べている。

 青沼陽一郎氏に比べ、遠藤誉氏は複合的な視点で分析しているが、いずれにしても、7月23日のポンペオ演説が、カリフォルニア州のニクソン大統領記念図書館で行われたということに、隔世の感を抱いている。

 「ニクソン・ショック」によって、アメリカとチャイナの蜜月時代が始まった。今回のポンペオ演説がニクソン大統領記念図書館で行われた意義を確認するため、簡単に歴史を振り返っておこう。

 1949年、中国共産党が内戦を制し、国民党は台湾に逃れて中華人民共和国(以下チャイナ)が建国された。
 チャイナが国連に加盟する3か月前の1971年7月9日、ヘンリー・A・キッシンジャー国家安全保障問題担当大統領特別補佐官は、北京で周恩来国務院総理と極秘会談をした。
 同年10月にもキッシンジャー博士は再度チャイナを訪れ、周恩来総理と10回にも及ぶ会談をすることになる。チャイナは中華民国(台湾)に代わり国連に加盟し、同時に常任理事国になる。

 「ニクソン・ショック」は、1971年7月9日以降行われたヘンリー・キッシンジャー博士の秘密訪中によって周到に準備され、アメリカとチャイナの蜜月がスタートしたのである。キッシンジャー博士と周恩来総理の機密会談記録等は、一部が抹消されているものの機密解除されている。

 チャイナの躍進を援護するように、1971年8月から本田勝一氏によるルポルタージュ「中国の旅(取材にはチャイナの全面的なサポートがあったいわれている)」が朝日新聞に連載され、日本軍の残虐・非人道をことさら脚色し、「南京大虐殺」の種を蒔く。

 1972年のニクソン大統領訪中、同年沖縄返還、そして、米中の蜜月時代が始まりチャイナの驚異的な経済成長の基礎が築かれる。

 チャイナの台頭に呼応するように、1982年9月2日(朝日新聞大阪版)に、「朝鮮の女性私も連行元動員指揮者が証言、 暴行加え無理やり 37年ぶり危機感で沈黙破る」と報道し、いわゆる「慰安婦問題」を世界に拡散し日本を貶めていく。

 1989年の天安門における自国民虐殺を糊塗するため、ことさら、日本軍の残虐非道を喧伝する。チャイナにひれ伏し、富を築くビル・クリントン大統領が登場する。1997年には、チャイナ系アメリカ人のアイリス・チャンを使い、「ザ・レイプ・オブ南京」を大々的に世界に喧伝した。

 いわゆる「瓶の蓋論」は、キッシンジャー博士と周恩来総理との会談によって生まれた。健全な国家は、潜在的な脅威に対しヘゲモニー(覇権)を手に入れ、自国を強化したり同盟を結んだりして均衡状態(バランスオブパワー)を志向する。そうならないように、蓋をして日本列島に閉じ込めておくというのが「瓶の蓋論」である。

 キッシンジャー博士:
 
自力で自らを防衛する日本は、周辺にとって客観的に危険な存在となるでしょう。より、強力になるでしょうから。それゆえ、私は、現在の対米関係が、実際には日本を抑制しているのだと信じています。
 もし我々が皮肉な政策をとろうとすれば、我々は日本を開放し、自らの足で立つように促すでしょう。これは日本と中国の間に強い緊張を引き起こすでしょうから、我々がその間に入ることになります。それはとても近視眼的です。あなた方も我々も、双方が犠牲者となるでしょう。

 ですから、我々が日本について相互に理解し、我々双方が、日本に対して抑制を示すことが重要なのです。日本は太平洋において、アメリカの政策に従順であり得ると信じるアメリカ人はナイーブ
(バカ正直)です。日本人には彼ら自身の目標があるのであって、その目標はワシントンではなく、東京で作られるのです。

 アメリカの政策について、別の文脈から私がすでに述べたことを、具体的に繰り返しましょう。第一に、我々は日本の核武装に反対します。このことについて、なんの権限もない政府関係者が何と言おうとです。そのうえ、彼らは決してそのようなことは述べていない、と言っています。

 第二に、我々は日本の通常兵器が、日本の四島を防衛するのに十分な程度に限定することが好ましいと考えています。我々は、日本の軍事力が、台湾や朝鮮半島、またこれまでの協議で指摘したほかの地域であれ、どこに対しても膨張することに反対します。

 周恩来総理:
 
もしあなた方が、日本の核武装を望まないと言うなら、それは日本が他国を脅かすために、あなた方が防御的な核の傘を提供するということですか?

 キッシンジャー博士:
 
日本はそんなことができますか?どうやってですか?

 キッシンジャー博士:
 
仮想の状況についてお話するのはとても困難ですが、日本の行為によって生じるような軍事的紛争に対して、核の傘が適応されるなどということを、私はきわめて疑わしいと思っています。
 核の傘は、本来、日本列島に対する核攻撃に対して適応されるものです。我々が核兵器を、自国のために使うと同じように、日本のために使うのではないことは当然です。実際、そういうことはあまりないでしょう。しかし、日本は核兵器を非常に迅速に作る能力を持っています。

 キッシンジャー博士:
 
・・・・ですから、要するに我々は、日本の軍備を日本の主要四島防衛の範囲に押しとどめることに最善を尽くすつもりです。しかし。もしそれに失敗すれば、ほかの国とともに日本の膨張を阻止するでしょう。

 「瓶の蓋論」を維持しようと思えば、日本の軍事力を一定の範囲に限定しないといけない。アメリカが圧力をかけることなく、日本自ら委縮することが望ましい。例えば、軍国主義悪玉論が敷衍すれば実に効果的だ。その地点で考えると、「南京大虐殺」、「慰安婦問題」を喧伝することは極めて有効な手段になる。

 「瓶の蓋論」のキッシンジャー博士と周恩来総理の思惑を忖度したのか、偶然だったのかはわからない。しかし、「東京裁判」と、「軍国主義悪玉論」と、「南京大虐殺」と、「慰安婦問題」の相乗効果はすばらしく、一国平和主義とでもいったらいいのだろうか、極東に奇妙な国が生まれた。

 「ポンペオ演説」によって「ニクソン・ショック」の蓋がとれようとしている今、瓶の外に出て、将来の世代に遺産を残すか、瓶の中で先人の遺産を食いつぶすか、20年後にはその答えも出るだろう。


 参考書籍等
 〔1〕周恩来キッシンジャー機密会談録 毛利和子 増田弘監訳 ㈱岩波書店
    2004.2.24

 〔2〕「ニクソン・ショック」は、米ドル紙幣と金の兌換を停止したブレトン・ウッズ
   体制の終結と、ニクソン大統領の訪中による新たな外交政策の展開という、二つの
   ショックをいう。本稿は、後者である。


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