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二度目の敗戦

平和ボケ

 バブル期に日本のゼネコンが、ニューヨークのセントラルパークを見下ろす白亜のホテルのオーナーになったことがあった。1985年9月、そのプラザホテルで、日、米、英、西独、仏の蔵相と中央銀行総裁が集まり、「プラザ合意」が発表された。
 双子の赤字(貿易赤字と財政赤字)に苦しむアメリカを救済するため、為替相場をドル安に誘導する(円高)政策協調だった。

 アメリカの強かさは、存在すら隠されていた先進5カ国の国際金融担当者会合を表舞台に出し、ドル売りに殺到させるため「プラザ合意」を「政治ショー」にしたことである。

 日米戦争の敗戦から40年、円高受け入れを強いられた日本は、二度目の敗戦を喫したといわれた。属国の悲哀といえばそれまでだが、自国の「防衛」を他国に依存する国の惨めさを曝け出してしまった。

 尚、現代の「防衛」とは、ハードだけでなく、チャイナの超限戦(輿論戦・心理戦・法律戦)等や、ロシアがクリミアで初めて行使したハイブリッド戦の抗戦を含む。

 下記のグラフは、プラザ合意から第2次安部内閣成立まで、あたかも、日本経済の凋落を辿るかのようである。


 Wウィルスの感染拡大による特別定額給付金のオンライン申請が、入口だけだったのには驚いた。市区町村の作業は、アナログのままで混乱は全国に及んだ。マイナンバー制度の制約のため、申請データをシステム上で住民基本台帳と照合することができなかったのである。

 日本は「ものづくり」に拘り、デジタル化への対応が遅れた。世界の企業の市場価値(時価総額:株価×発行済株式数)の1995年のランキングは、日本企業がトップ20に8社だったが、2019年末では50位以内に入るのは、33位のトヨタだけになった。

 因みに、トップテンは、SNS、検索サービス等によりビッグデータを扱う企業が占め、業態が変わってしまった。グーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン・コムが扱うのは世界中のデータであり、寡占化が容易なため、資本主義の基盤である市場の自由な競争すら危うくなっている。米国の電子商取引の市場で、アマゾンのシェアは44%であるが、ウォルマートは7%にすぎない。

 また、ビヘイビア(行動)ターゲティング広告は、広告の対象である顧客の行動履歴から、興味関心を推測して広告するものである。追跡型広告ともいわれる。とはいえ、プライバシーの問題が付随し、チャイナのような監視社会と表裏一体なので、新たな難題も突き付けられている。
 例えば、ネットで何かを買えば、それに関連する商品広告がメールで送られてくる。なんだか、個人の趣味まで見られているようで、複雑な気分になる。

 日本の企業が、「データ支配世界」に参入する余地はない。1990年以降の「ものづくり」は、エレクトロニクス産業でデジタル化が進み、「標準的な技術・部材」や、「設計・製造の外注サービス」が提供されるようになり、モジュール化(交換可能、標準化)とオープン化が進んだ。「ものづくり」は新興メーカーであっても、短いサイクルで、低コストの多様な製品を提供することができるようになった。

 携帯電話に例をとれば、携帯電話は国際規格があり、それに準拠したソフトウェア等のプラットホーム、アプリケーション等のソフト、IP(知的財産)が供給されている。さらに、チャイナや台湾を中心に、ファブ(製造組み立て)やデザインハウスがあり、オープンで水平分業的な開発、生産、供給のネットワークが構築されている。

 かろうじて、33位に残っているトヨタの「ものづくり」はどうだろう。

 製品設計の基本思想を「製品アーキテクチャ」というが、大別すれば、「擦り合わせ(インテグラル)型」と「組み合わせ(モジュラー)型」になる。
 上記の携帯電話が「組み合わせ型」になるのは明らだが、トヨタは「擦り合わせ型」だ。「ものづくり」日本を支えたのは、設計の相互調整、開発と生産の連携、濃密なコミュニケーション、一貫した工程管理、顧客の希望を吸い上げる「顧客インターフェース」の確保だった。

 私は、電気自動車は「組み合わせ型」になるのではないかと思う。

 インターネットが、軍事技術のスピンオフ(民生転用)であるのはよく知られている。日本は「防衛」を軽んじたため、軍事技術の開発は停滞しアメリカからの輸入(FMS:有償援助)が多くなった。使うことは出来るが、ブラックボックスのため内部構造は見ることができない。

 平和ボケが蔓延し、日本は「第二の敗戦」から立ち上がれないのかもしれない。

 ※参考資料
 FMS(Foreign Military Sales:有償援助)は、米国政府が、経済的な利益を目的とした装備品の販売ではなく、米国の安全保障政策の一環として、武器輸出管理法に基づき、同盟諸国等に対し、装備品等を有償で提供するものであり、日米間においては、日米相互防衛援助協定に基づいて行われているものです。こうした仕組みによって、一般では調達できない軍事機密性の高い装備品や米国しか製造できない最新鋭の装備品を米国政府から調達できる点で、FMSは、わが国の防衛力を強化するために非常に重要なものと考えており、近年FMS調達は増加する傾向にあります。
 
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2018/html/nc037000.htm
 

 輸入及びFMSの長所と短所
 長所
 ・一般的に割安
 ・早期取得可
 短所
 ・生産・技術基盤維持に資さず(維持・修理・補給に時間とコストがかかる)
 ・雇用・所得効果なし
 ・独自の改善不可能
 ・必ずしも最新のものを導入できない


 参考書籍等
 〔1〕藤本隆宏外著「ものづくり経営学」光文社新書2017.10.25発行
 〔2〕2020.7.26 産経新聞「戦後75年第3部 資本主義①」
 〔3〕2020.7.30 産経新聞「戦後75年第3部 資本主義⑤」



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