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税理士・社会保険労務士
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社会契約論による憲法九条

国家法人説と自衛権

 アメリカのミサイル防衛システムは、超高速弾道ミサイル、低空弾道ミサイル(北朝鮮は持っている)、多核弾頭ミサイル(一発のミサイルに囮を含めた十以上の弾頭を持つミサイル)及び自在に方向を変える巡航ミサイル(ドローンも入る)に対応できない。
 また、ミサイルにシグナルを送る人工衛星を破壊・麻痺させる、上空で核弾頭を爆発させて電磁波を攪乱することによっても、ミサイル防衛システムは無効になる。

 首相談話はもっともだと思うけれど、「憲法九条がぁー」といわれるので、以下、稚拙ながら、憲法九条を考えてみる。

 法令解釈は、文言どおり解釈する「法規的解釈(定義規定、みなし規定、目的規定等)」と、立法の意図に沿って解釈する「学理的解釈」があるとされる。さらに、「学理的解釈」は「文理解釈」を原則としつつ、「論理解釈(目的解釈・条理解釈)」がある。

 私のような実務家が扱う租税法は、侵害規定であり法的安定性の要請が強く働くため、みだりに論理解釈はすべきではなく、学理的解釈・文理解釈をするというのが一般的である。文理解釈によって明らかでない場合、規定の趣旨、目的に照らして解釈するということになる。 

 日本国憲法
 第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
 2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

 第十一条 国民は、すべての基本的人権の享有を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与へられる。

 第十三条 すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。


 憲法前文より
 
そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。

 憲法前文に、「
国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて」とあることからして、社会契約論によるものであることが明確である。十一条の「基本的人権」、十三条の「幸福追求権」は信託の要件であり、国家は義務の履行のために「自衛権」はなくてはならないという、英米流の立憲主義の考え方になるはずだ。
 その地点で読めば、なんの違和感もなく憲法九条は受け入れられる。

 ところが、内閣法制局も、憲法学者も、英米流の立憲主義によらず、国家法人説という擬人化によって、「自衛権」の議論を展開してきた。美濃部達吉も、私が学生時代に受講した「憲法講座」も、国家法人説だった。

 国家の自己防衛の範囲が「最低限」なのが個別的自衛権であり、集団的自衛権は「最低限以上だから違憲」という、本末を顛倒した議論になってしまった。

 これは、私たち実務家が最も嫌う、論理解釈(拡張解釈や類推解釈)に他ならない。
 国家を擬人化したため、自己保存権としての「自衛権」は、自分自身(国家)を守るためにあるという概念構成になっている。国家の自己保存権として認められるのは、「個別的自衛権だけだ」という自家撞着的な議論が繰り返された。

 内閣法制局の見解は、国家を擬人化して社会契約論から乖離しているため、国民は主権者であり、国民自身が自らを守ることが自衛権という構成になる。「民衆蜂起」が残された自衛権行使だという学説が根強かったくらいだ。とどのつまり、真の国民主権、真の国家主権が求められ、議論が尽きることはない。

 社会契約論によれば、九条一項が放棄する武力行使は義務の履行のことになる。したがって、付託された政府が、国民の基本的人権を守るためにとる均衡ある措置(自衛権の行使等)が含まれることはない。冒頭の敵基地攻撃能力を持つことは、九条一項が放棄している武力行使に当たらず義務の履行に過ぎない。

 「国家が自分自身を守る」という超憲法典的な論理は、ドイツ・フランスの国家法人説及び国民主権論を基に、憲法の条規を越えた「不文の憲法原理」を中心におく憲法論だろう。


  参考書籍等
  篠田英朗著「集団的自衛権の思想史」㈱風行社 H28.7.15発行
  川田 剛著「租税法入門」㊖大蔵財務協会 H19.4.11発行



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