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今だけ、金だけ、自分だけ

メインストリームメディアの欺瞞

 横田滋さんが、6月5日に亡くなられた。心よりお悔やみ申し上げます。
 国家の根幹である「防衛」を忌避する国の国民として、通り一遍の弔意でしかないことに忸怩たる思いがある。

 本書の巻頭に著者もふれているが、59年に始まった在日朝鮮人や日本人妻らの北朝鮮帰還事業を日本のメディアは後押ししていた。北朝鮮は地上の楽園という偏った空気に覆われていた。拉致事件はその余韻の中で起きている。

 著者は「日本海で変なことが起きている」ということが気になり、地方紙を漁り未遂事件に出会うことになる。

 78年8月16日に、北日本新聞(富山)が未遂事件を報じていた。
 
「高岡の海岸 4人組が若い男女襲う 手錠かけ寝袋覆う」
 当時、拉致と言っても、「そんなことはあり得ない」といわれる時代である。変な事件で済んでしまったようだ。

 アベック(まま)の拉致未遂事件があった富山県高岡市・雨晴海岸
 https://www.info-toyama.com/spot/21011/

 襲われた被害者は、得体のしれない恐怖のため、代わって両親から聞き込みをした。
 ・犯人たちは日本人ではないようでした。
 ・赤銅色に日焼けして、たくましそうだった。役割分担しているようで手際が良く、訓練されているようだった。
 ・話した言葉は(B子さんに)、たった一言だけ。「静かにしなさい」と言ったそうです。日本語です。
 ・体を触ったりすることは、まったくなかった。

 インタビューした著者によると、「静かにしなさい」という犯行に似つかわしくない丁寧な言い回しが、その後、ずっと頭の隅に引っかかったそうだ。
 合点がいったのは、新潟事件の被害者、蓮池薫氏が帰国後にいった次の証言による。
 
海岸で近づいてきた犯人が日本語で「すみません、たばこの火を貸してもらえませんか」と話しかけ、いきなり顔を殴ってから「静かにしなさい」と言った。
 日本語を話すことと、ニュアンスも含めて使いこなすこと別なのだろう。

 以後も、丁重に地を這うような取材が続く。
 80年1月7日 サンケイ新聞が、「アベック3組ナゾの蒸発 福井、新潟、鹿児島の海岸で」と別の事件の詳細を報じる。
 報道については、サンケイ内部でもかなりの議論があったようで、わざわざ正月の報道を外している。
 翌8日、サンケイは続報として、福井、新潟、鹿児島の3件のアベック蒸発について、家族の取材から心中の可能性の低さについて触れている。

 ところが、このスクープはメインストリームメディアから無視された。サンケイが報じた「外国情報機関が関与?」は「ありえない」というわけだ。
 この報に接した横田早紀江さんは、直感で、「めぐみに起きていることではないか」と思ったという。めぐみさんのことが明らかになるのは、以後、17年という歳月を経ることになる。サンケイの報道は虚報として扱われたまま、大韓航空機爆破事件が起きる。 

 88年1月15日 大韓航空機爆破事件が起き、逮捕された金賢姫の「李恩恵(リウネ)という拉致された日本人から、(日本化)教育をうけました」という証言が報道される。
 メインストリームメディアは色めきだち、三つのアベック蒸発事件が注目が集まる。しかし、金賢姫の証言の信ぴょう性に疑念が湧くと、元の木阿弥になり、「サンケイの虚報」だけが残った。

 88年3月26日 参議院予算委員会 梶山静六国家公安委員長答弁
 
昭和53年以来の一連のアベック行方不明事犯、恐らくは北朝鮮による拉致の疑いが十分濃厚でございます。解明が大変困難ではございますけれども、事態の重大性に鑑み、今後とも真相究明のために全力を尽くしていかなければならないと考えておりますし、本人はもちろんでございますが、ご家族の皆さん方に深いご同情を申し上げる次第であります。

 メインストリームメディアの欺瞞は、拉致を認めた「梶山答弁」を無視したことに尽きる。この重大な答弁が、テレビで全く放映されなかった。

 産経が29行、日経が12行、それぞれの夕刊はベタ(1段)記事だけだった。朝日、読売、毎日は一行もなかった。この時の答弁の映像はNHKにも残っていないという。歴史的な国会答弁の映像が、日本のどこにも存在しない。

 拉致された同胞を見捨てるという行為は、敗戦を終戦と言い換えて歴史を断ち、先人の魂を否定したことに通底する。そこに国民は存在しない。「今だけ、金だけ、自分だけ」という、刹那的、拝金主義的、自己主義的な浮遊する個の集合体があるだけだ。

 そして、97年2月3日 産経新聞
 
「20年前、13歳少女拉致」北朝鮮亡命工作員証言 新潟の失踪事件と酷似 韓国からの情報 と産経朝刊一面で報じる。
 社会面トップに、
「うちの娘だと思う」めぐみさん両親 死亡宣言せず待った
 と、5段記事が掲載された。

 今度は、メインストリームメディアも追随し、読売、毎日は3日夕刊で掲載した。朝日だけが遅れ、4日になり、本記事ではなくあまりみかけない形の記事が第2社会面に3段で載った。
 サンケイの虚報が現実になり、横田夫妻も、めぐみさんの後姿がかろうじて見えるようになった。

 朝日の偏向については、ソーシャルメディアでは周知の事実である。拉致事件を発掘した著者も朝日新聞の偏向を列挙しながら、最後に、「きりがない」とまで言っている。「梶山答弁」を無視することの真意は、反国家、反国民といわれても仕方なかろう。

 ・なぜ、宇出津事件(77年、久米裕さん拉致事件)の記事が「拉致」ではなく、「蜜出国」なのか。
 ・なぜ、政府が初めて北朝鮮による日本人拉致疑惑の存在を認めた「梶山答弁」(88年)の記事が載っていないのか。
 ・なぜ、朝日の訪朝団(92年)は拉致について北朝鮮にたださなかったのか。
 ・なぜ、横田めぐみさん拉致疑惑発覚(97年)の本記事が見当たらないのか。
 ・なぜ、家族会結成(97年)の記事が他紙より小さいのか。


 朝日新聞が未だに存在しているという現実を、一体、どのように理解したらいいのだろうか。シャレではないが、少なくとも拉致は彼らにとって埒外なのだろう。

 追記:
 「今だけ、金だけ、自分だけ」は、東京大学大学院の鈴木宜弘教授の「食の戦争」(文春新書)による。
 尚、鈴木教授は、卒業生・修了生への祝辞のなかで、「今だけ、金だけ、自分だけ」の「3だけ主義」で目先の儲けや保身に陥ると、自分も組織も長期的には持続できない。
 何事も基本は、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の「三方よし」がいいといっている。

 「3だけ主義」は日本経済が停滞した平成という時代を象徴する言葉ではなかろうか。刹那的、拝金主義的、自己主義的な近視眼思考によって、「拉致」も無視することができた。その結果、企業は外資に買われ、オフショアリングによって国内は空洞化し、人の移動を緩和して訪日外国人の消費をあてにする。
 何故、景気を良くして国民の消費を刺激しないのだろう。


  参考書籍等
  阿部雅美著「メディアは死んでいた」㈱産経新聞出版 H30.7.18発行



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