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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

Profound Contempt(深い軽蔑感)

臆病者の国、日本は世界から侮蔑される

 伊藤貫:
 
僕が個人的にCIAとかペンタゴンとか国務省のアジア担当官とプライベートな場で議論した経験からいうと、彼らの圧倒的多数は日本人に対してProfound Contempt(深い軽蔑感)を抱いています。「日本人は浅薄で臆病だ。彼らは卑怯者だ。日本人は自分自身で論理的に深く考える能力を持たない」と。・・・・・
 〔1〕

 17世紀にトマス・ホッブスが「社会契約」を論じ、ジャン・ジャック・ルソーやフランス革命を経て、「主権論」が「国」の概念と結びつくようになった。そしてヘーゲル以降、20世紀後半の脱植民地の過程において、主権を持つ国民が国家を形成するという思想(国民国家)が世界に広がった。

 現在の国際秩序は、国民国家が「主権」をもって統治するという「しくみ」のことである。とはいえ、たかだか百年に満たない制度でしかない。しかも、欧州人等にとっては異質の、アメリカの覇権的な力と価値観によって、二十世紀の国際秩序は形成された。

 「国際秩序の現実」は、「アメリカが西半球世界でモンロー・ドクトリンの一部として発展させたものだ」という認識がなければ理解できない。したがって、「集団安全保障」、「集団的自衛権」、「自決」、「主権平等」及び「人権及び基本的自由」は、現在の国際秩序に一律的に適用できる原理になっていないのである。

 サミュエル・ハンチントン氏がいうように、文化と文化的なアイデンティティ、すなわち最も包括的なレベルの文明のアイデンティティが、冷戦後の統合や分裂あるいは衝突のパターンをかたちづくっているのであり、イスラム諸国やチャイナ等と民主主義国家の衝突は深刻なのだ。
 ハンチントン氏の指摘は、国民国家は現在も今後も国際問題における重要な主役であるが、その利益、協力関係及び対立は、ますます文化と文明という要因によって方向づけられるようになるというものだ。

 極東は、中東と共に21世紀の危険地帯といわれる。ロシア、チャイナ及び北朝鮮は日本を覆うような位置にあり、いずれも核保有国である。国際関係論に「民主的平和理論※」があるが、これらの国は民主主義国家とはいえず、核を保有し、日本に強力な圧力をかけることができる。
  ※民主的平和理論
 民主主義体制の国民国家間では、平和的な紛争解決が行われるという理論である。また、ジョセフ・ナイとロバート・コヘインの両氏による「複合的相互依存」も同様な理論だが、個々人間や企業等の狭義の相互依存をさす。

 百年に満たない、「未成熟な国際秩序」に寄りかかって安逸を貪るわけにはいくまい。以下、誰でも考えるであろう程度の拙い知識ではあるが、防衛について考えてみたい。

 領海を含む日本の排他的経済水域の総面積は世界6位であるが、国防費は韓国以下というお粗末な状況にある。
 米軍事専門雑誌Defense Newsが昨年の7月に発表した世界の防衛企業「トップ100」から、三菱重工業、IHI、三菱電機が消え、製造業では川崎重工だけになっている。
 既に、コマツが陸上自衛隊の車両の新規開発を中止したことが明らかになっているが、三菱電機がライセンス生産していたF35も輸入に切り替えている。防衛産業は景気に左右されず、技術の蓄積というメリットがあるが、輸入に頼ると技術だけでなく内需まで失う。

 
 https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2019/image/zuhyo02040305.gif 





 FMS(Foreign Military Sales:有償援助)は、米国政府が、経済的な利益を目的とした装備品の販売ではなく、米国の安全保障政策の一環として、武器輸出管理法に基づき、同盟諸国等に対し、装備品等を有償で提供するものであり、日米間においては、日米相互防衛援助協定に基づいて行われているものです。こうした仕組みによって、一般では調達できない軍事機密性の高い装備品や米国しか製造できない最新鋭の装備品を米国政府から調達できる点で、FMSは、わが国の防衛力を強化するために非常に重要なものと考えており、近年FMS調達は増加する傾向にあります。
 
https://www.mod.go.jp/j/publication/wp/wp2018/html/nc037000.html



 輸入及びFMSの長所と短所
 長所
 一般的に割安
 早期取得可
 短所
 生産・技術基盤維持に資さず(維持・修理・補給に時間とコストがかかる)
 雇用・所得効果なし
 独自の改善不可能
 必ずしも最新のものを導入できない

 防衛費はGDPの1%以内という本末を転倒した議論が先行し、国内調達も横ばいである。相対的な防衛力は低下しているのではないか。国民の無関心が防衛産業を見捨てている。

 ロシア、チャイナ及び北朝鮮は1発で数百万の殺傷力がある水爆を保有している。この三国の戦略をクラウゼヴィッツ流に換言すれば、「核戦略とは、他の手段を持ってする政治の継続である」となるだろう。現在の国際関係を構築しているのは覇権国の論理である。

 北方領土や拉致された同胞が、お願いするだけで帰ってくるはずもなかろう。アメリカの「核の傘」があるという人がいれば、冒頭の伊藤貫氏の発言を読んでみるといい。
 少なくとも、核戦略理論くらいは知っておこう。

 Minimum Deterrence(ミニマム・ディテランス・最小限の抑止)理論は、双方が核兵器を使えば共に巨大な被害を被るため攻撃しないという抑止の理論である。
 一方、Counterforce(カウンタフォース)理論は、ハーマン・カーンやアルバート・ウォルステッターが、難解な高等数学を駆使して、核攻撃を数十段階にエスカレートさせれば核戦争に勝てるというゲーム理論である。有り体にいえば、敵側により巨大なダメージを与えたほうが勝ちという理論である。日本人が信じている「核の傘」だ。

 ロシアが日本に核攻撃をした場合、アメリカがロシアに核攻撃をする可能性があるだろうか。もしくは、アメリカがロシアと核戦争ゲームをしてくれるか、ということだ。
 北朝鮮ですら移動式のICBMを持っている。チャイナやロシアは既にSLBM(潜水艦発射式弾道ミサイル)を持っている。攻撃の対象すら特定できないのに、報復攻撃はできない。

 日本がアメリカから買っている、イージス、パトリオット及びTHAADは数兆円するけれど、全く役に立たない。サウジアラビアは最新鋭のミサイル防衛システムを構築していたが、イランが使った一機数百万円のドローンにやられてしまった。
 パトリオットミサイルは、湾岸戦争で有名になったミサイルだが、終末航路対応で20~30㎞の範囲しか防衛できない。パトリオット(Patriot)とは愛国者の意味だけれど、用途は限られるだろう。

 アメリカのミサイル防衛システムは、超高速弾道ミサイル、低空弾道ミサイル(北朝鮮は持っている)、多核弾頭ミサイル(一発のミサイルに囮を含めた十以上の弾頭を持つミサイル)及び自在に方向を変える巡航ミサイル(上記ドローンも入る)に対応できない。
 また、ミサイルにシグナルを送る人工衛星を破壊・麻痺させる、上空で核弾頭を爆発させて電磁波を攪乱することによっても、ミサイル防衛システムは無効になる。

 R1年8月に、ロシアのアルハンゲリスク州にあるロシア海軍の実験場で爆発事故があった。セヴェロドヴィンスク市の市民保護局は、一時的な放射線レベルの上昇を発表している。ロシアの一連の事故を考えると、爆発事故がそのまま原子力事故に繋がる「原子力推進巡航ミサイル」の可能性がある。
 原子力推進巡航ミサイルは事実上無制限の航続距離を持ち、米ミサイル防衛網に捕捉されない複雑な飛行経路をとることができる。

 伊藤貫氏がいうように、潜水艦に二百発の核弾頭を配備して防衛能力を持てば、GDPの0.1%で自主防衛が可能になる。国産調達に多く投資できるし、防衛産業を育て自衛隊員の待遇も改善され、内需も増える。なによりも、冒頭のように米国政府高官に侮蔑されなくなる。

 伊藤貫氏はCIAや国務省の日本担当官に「日本人が憲法のLegitimacy(正統性)に関する議論をすると、日米関係が揺らぎますよ」といわれたそうである。
 
 とはいえ、前回のアメリカ大統領選挙のように、ソーシャルメディアがメインストリームメディア(オールドメディア)を凌駕したようなことが日本で起きれば、日本も変わることができる。属国の汚名を払拭できるようになってほしい。


 参照書籍等 
 〔1〕クライテリオン 2020 January 「臆病者の国、日本は、世界から侮蔑される」伊藤貫×藤井聡
 〔2〕篠田英朗著 「国際紛争を読み解く五つの視座」講談社2015.12.10発行
 〔3〕 サミュエル・ハンチントン著 鈴木主税訳「文明の衝突」㈱集英社1998.7.28発行



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