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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

子守り協同組合

子守りクーポン

 実際にあった話である。

 議会職員の若夫婦が150組ほど集まって、ベビーシッター代を節約するために、交代でお互いに子守りをする「子守り協同組合」を設立した。
 互いに公平に子守りをするために、加入した夫婦に20枚の子守りクーポンを発行することになった。1枚は子守り1時間分として、脱退時には20枚を組合に返さなければならない。

 1時間子守りをすると、子守られ夫婦は子守り夫婦にクーポン1枚を渡すことになる。長時間子守りを依頼するとクーポンが少なくなるので、減った分は子守りをして補充しなければならない。

 特に、長時間の外出などがある夫婦はどうしても補充しておきたい。しばらくすると、みんなが同じように考えて、いざという時のためにクーポンを持っておこうと考えるようになった。
 その結果、子守られ夫婦が少なくなって、流通するクーポンは平均的な夫婦が希望する手持ちの予備を下回るようになった。クーポンを増やそうとして外出しなくなったのである。みんなが、手持ちを増やそうとしたために、ますますクーポンを稼ぐ機会がなくなり、とうとうクーポン貧乏になってしまった。

 流通するクーポンが少なくなってしまったのである。そこで組合は、クーポンを増刷して、組合員にそれぞれ10枚ずつ配ることにした。これはうまくいって、幸いにもクーポン貧乏から抜け出すことができた。

 とはいえ、何らかの理由でみんながもっと多くのクーポンを保有したいと思うようになったらどうだろうか(流動性の罠?)。子守られ不夫婦がいなくなってしまったら、・・・・・そう、「子守り協同組合」は破綻するだろう。
 「あなたの支出は私の収入、私の支出はあなたの収入」なのである。

 上記は、「さっさと不況を終わらせろ」から、不遜にも私が勝手にアレンジした。
1978年の「金融理論とキャピトルヒル子守り協同組合の大危機」という論文があり、ネットでも「経済を子守りしてみると」いうタイトルで山形浩生氏が解説している。
 
https://cruel.org/krugman/babysitj.html 

 子守り組合という小さな規模では、クーポンの増刷は一応効き目があった。では、もっと大きな国家規模になればどうだろう。たとえば日本、マネタリーベースを増やしても経済が復活できないという、「流動性の罠」に嵌ってしまっている。

 流通するクーポンが少ない(需要不足)から、1クーポン当たりの子守り時間を1.5時間にしたら(クーポンの価値を上げる)子守られ夫婦が増えたのだろうか。このままでは破綻するからと、財政均衡を謳い「ジリ貧への道」を進むしかないのだろうか。

 増税(誰かの支出)して、政府が使っても(誰かの収入)景気への影響は少ない。むしろ、消費税増税は、国内総生産(支出側)の「家計最終消費支出・民間住宅」を押し下げるだろう。「家計最終消費支出・民間住宅」はH29/3期でGDPの57.4%を占めているため、押し下げの影響は大きい。

 「子守り協同組合」と違い、中央銀行を持っている政府が自ら需要を創出すれば(財政支出)、民間に新たな所得を生み出すことができる。名目GDPと税収の相関係数は0.9※と高いのである。

 ※H19/3~H29/3期の確定値より算出(0.905)
 相関係数
 0.7<強い相関
 0.4~0.7=中間の強さ
 0.2~0.4=弱い相関
 0.2>相関なし


 参考書籍
 〔1〕ポール・クルーグマン著 山形浩生訳「さっさと不況を終わらせろ」㈱早川書房2012.7.25発行




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