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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

グレート・ゲーム

地政学から見る明治維新

 

 明治維新から150年の今年、NHKの大河ドラマも「西郷どん」だそうである(殆どテレビを見ないので)。加えて、10日には人気作家による通史「日本国紀」が発売され、前評判が高く歴史の関心も更に高まっていくことだろう。
 150年という節目の年は、残すところ一月余りとなってしまった。私なりに明治維新について、「地政学」、「グレート・ゲーム」という視点から考えてみたい。


 
 ヨーロッパの近代史は、欧州全土の覇権を握ろうとすると必ず欧州大陸の両側の国、英露が押しつぶしてきた。オーストリア(ハプスブルグ家)はロシアが、ナポレオン戦争ではイギリスが、第一次世界大戦のドイツには英露が、また、第二次世界大戦のドイツはイギリス(アメリカも加勢)というように、欧州大陸の覇権を決して握らせなかったのである。これを「くるみ割り理論」というそうだ。

 一方、アメリカは西海岸到達で足踏みしたマニフェスト・デスティニー(※)が、アルフレッド・マハンによって、「シー・パワー」という重要概念で補強され、太平洋の彼方を目指すようになる。マハンの功績は軍事・戦略の分野で燦然と輝き、次代のマッキンダーに影響を与えたといわれている。
 「明白な使命」といわれる文明の西漸説のこと

 このようなパワーゲームのなかで、「歴史には回転軸がある」といったのがイギリスのハルフォード・マッキンダーである。マッキンダーは1900年代初頭のユーラシア内陸部を、ハートランド、その外縁をインナー・クレセント(内側の三日月地帯)、さらに続く大陸というべき巨大な島々をアウター・クレセント(外側の三日月地帯 )と定義し、有名なテーゼ「東ヨーロッパを制するものはハートランドを制し、ハートランドを制するものは世界島(※)を制し、世界島を制するものは世界を制する」と論じた。
 マッキンダーはユーラシア大陸とアフリカ大陸を一つの世界島とした。

 ハートランドはロシアであり、ロシアがランド・パワーを代表する国になり、インナー・クレセントの外縁のイギリスはシー・パワーを代表する国になる。ハートランドを取り囲むインナー・クレセントは、温暖多湿な気候で地球人口の大部分が暮らしている。
 その外縁に日本、イギリスがあり、さらに外側のアウター・クレセントにはアメリカ、カナダ及びオーストラリアがある。

 マッキンダーによれば、世界島の動きを支配するハートランドとハートランドの外縁部という地理的制約を受けたこの二つの勢力のせめぎ合いが「グレート・ゲーム」を形成してきたのである。
 このような視点で世界史を見るならば、インナー・クレセントの外縁部であるシー・パワーの日本が、同じ外縁部のイギリスとの同盟により日露戦争に勝利し、ランド・パワーのドイツとの同盟により、第二次世界大戦の敗戦国になったことになる。

 明治維新の少し前(1853年~1856年)に起きたグレート・ゲームがクリミア戦争である。ナイチンゲールで有名であるが、ハートランド(ロシア)の膨張が誘引したということで世界史においても重要な戦争である。
 ロシアが地中海の道であるコンスタンチノープル(現イスタンブール)周辺の海峡地帯(ボスフォラス海峡、ダーダネルス海峡)に進駐したのが原因で、英仏等がオスマン帝国に加勢して大国間戦争になった。19世紀最大の数十万人という死者になり、世界的に普及した電信網によってその様子は逐一世界に発信された。
 尚、マッキンダーによれば、フランス、イタリア、エジプト、インドや朝鮮半島等は「橋頭堡」と呼ばれ、シー・パワーにとって大陸諸国をけん制する足がかりになる存在である。

 当時のイギリスの勢力圏は、ユーラシア大陸の南縁部(地中海からアラビア半島の沿岸部、ペルシャ湾、インド、マラッカ海峡、シンガポール、マレーから中国に至る沿岸沿い)だった。一方、ロシアは、モスクワから東西に戦力を伸ばし、東はオホーツク海、ベーリング海峡やカムチャッカ半島、西はバルト三国、ウクライナ、ポーランドのユーラシア大陸の北方である。
 クリミア戦争は、クリミアにおける局地戦ではなくグレート・ゲームだったのである。例えば、イギリス東洋艦隊はロシア艦隊を追って、駿河湾沖や、能登半島沖をかすめて両陣営の角逐が繰り返された。また、カムチャッカ半島のロシア軍港に対し、イギリス・フランスの連合艦隊が三度にわたって攻撃している。

 整理すると、幕末の日本は北からはロシアの南下、西・南からはイギリスとフランス、東からはアメリカ(ペリー来航)というように、四方からランド・パワーとシー・パワーの圧力を受け、加えてクリミア戦争というグレート・ゲームの余波の中で幕末を迎えていたのである。近代史において、これほど過酷な圧力を受けた国はない。

 経済的には、開国による膨大な金の流出によって大インフレになり、国際金融の力に翻弄されてしまった。「打ち壊し」の多発によって治安が乱れ、江戸時代末期は社会秩序が崩壊していった。

 仮に、内戦が継続していればどうなっていただろうか、さらに、「クリミア戦争」というグレート・ゲームがなかったならば、・・・おそらく、現在の日本は異なった姿になっていたであろう。


 参考書籍
 中西輝政著 「日本人として知っておきたい世界史の教訓」㈱育鵬社 2018.8.15
 篠田英朗著 「国際紛争を読み解く五つの視座」㈱講談社 2015.12.10



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