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「ワニの口」の内側

まあ、大丈夫だろう

 日本国民も、一九四五年以来、他国や他民族が戦争の悲劇に見舞われてきたことを目撃してきたはずだ。街が燃やされ、多くの人間が殺され、子供も殺されたのだ。それらすべてのケースがなぜ発生したかと言えば、当事者たちが、「まあ大丈夫だろう」(it will be all right)と思ってしまったからだ。

 人間というのは、平時にあると、その状態がいつまでも続くと勘違いをする。これは無理もないことだが、だからこそ、戦争が発生する。なぜなら、彼らは、降伏もせず、敵を買収もせず、友好国への援助もせず、先制攻撃で敵の攻撃力を奪うこともしなかったからである。つまり、何もしなかったから戦争が起きたのだ。

 
http://bunshun.jp/articles/-/2191?page=4

 エドワード・ルトワック※氏によると、北朝鮮の軍事開発力は極めて危険な域に達しており、真剣に対処する必要がある。日本が取るべき方策は、次の選択肢のどれか一つをとることだという。

 ①北朝鮮に降伏する(これも戦略である)
 ②北朝鮮を攻撃する
 ③抑止力(核弾頭・deterrence)を持つ
 ④防衛(ミサイル防衛・defense)する
 戦略において、正しい選択をおこなうのは、実は難しい。しかし、最悪の選択とは、「まあ、大丈夫だろう」と考え、何の選択も行わないことだ。

 日本は戦後70年以上の間、何の選択も行わないことを繰り返し、これからも繰り返そうとしている。江藤淳が「閉された言語空間」等の占領三部作で看破したとおり、私たちの言語空間は特定の姿しか見えない鏡張りの部屋のようになっている。

 周恩来・キッシンジャー機密会談 で明らかになった「瓶の蓋論」は、国務省、ペンタゴン及びCIAは「日本に核は持たせない」という方針の下で対日政策は策定されている。

 属国(client state)の居心地良さを受け入れてきた歴代の政権も、国民も、「まあ大丈夫だろう」と将来の危機に備えることなく見て見ないふりをしてきた。
 そして、このことに真面に向き合った中川昭一氏は排除されてしまった。

 こうして、私たちは「軍事力」という、国家の存立に欠かせない必須の前提に触れないようになった。しかし、北朝鮮危機と中国の台頭は、バランス・オブ・パワー(勢力均衡)の変化を余儀なくされ、我国の安全保障の根幹が揺らいでいる。

 2014年ベトナム沖の海底油田を巡り、中国は40隻の船でベトナムを威圧した。ところがベトナムは、陸で中国の旅行者や商店に対して暴動や焼き討ちを敢行した。ベトナムの中国人に対し見境なく攻撃して、「これは、子どもの遊びではない戦争だ。いざとなれば雲南省に攻め込む」、という気概を見せつけたのである。

 日本はどうだろう。平和主義者を騙り画策を意図する者、フェロー・トラベラー(同調者)、オポチュニスト(御都合主義者)、デュープス(騙されやすい人達)が蠢いているではないか。

 ※E・ルトワック氏は、逆説的論理(パラドシキカル・ロジック)という概念の提唱によって、近代西洋の戦略論に革命を起こした一人とされている。
 あらゆる戦略的行動にはパラドシキカル・ロジックが働いており、たとえば戦争のような状況になると、こちらがAという行動を行えばBという、いわばだれでも想定できるような「線的(リニア)」な結果は殆ど発生しない。Bという反作用が、作用と同じくらい、時にはそれ以上のインパクトを持つという意味である。


  参考書籍
 〔1〕エドワード・ルトワック※著「戦争にチャンスを与えよ」奥山真司訳 ㈱文藝春秋 2017.4.20
 〔2〕エドワード・ルトワック著「中国4.0」奥山真司訳 ㈱文藝春秋 2017.4.20




 

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