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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

蔑ろにされた下部構造

思い出そう明治の精神


 「独立行政法人産業経済研究所/世界25カ国の産業別名目・実質実効為替レート」より
 https://www.rieti.go.jp/users/eeri/(全ての製造業から)

 通貨の相場を一定とすると、実質実効為替レートは対外国との物価、賃金及び名目GDPによって増減する。日本はOECDの統計でも、消費者物価ベースで1977年初め、賃金ベースでも1974年初めの水準に落ち込んだままである。

 そろそろ現代人も、何かがおかしいと気づいてもいいのではないか。エドワード・ルトワック氏がいうように、環境問題に熱心な勢力の表向きの主張は、気候変動を食い止めるために化石燃料を使うのを止めようというものだ。しかし、その真意は「アンチ資本主義」、「アンチ経済成長」である。
 上記のグラフを見て、それが誰に裨益しているか考えてみるといいだろう。

 以下、データは少し前だが再掲する。

 Real GDP growth (Annual percent change)
 http://www.imf.org/external/datamapper/NGDP_RPCH@WEO/JPN?year=2018

 対岸の火事だったはずの「リーマンショック」だが、日本には予想外の影響があった。



 デフレを象徴するように日本の個人金融資産は逓増している。高度経済成長が長かったため資産形成期が長く絶対値も高いけれど、GDP比で見るとOECDの中ではイタリアと同等の水準である。

 デフレ期は貨幣そのものの価値が高くなり(貨幣の超過需要)、財やサービスに使わずに貯め込んでしまう。皆が、今買うより将来のほうがもっと安くなると考える(流動性選好)。このように誰もお金を使わないときに、政府が借金して率先して使うのが財政政策(反緊縮)だった。

 リーマンショック以降、日本はデフレーションに悩まされ、金融緩和にも拘らず景気はは低迷した。特に、日本でその傾向が顕著であったと思う。

 15年くらい前にベン・バーナンキ元FRB議長が、「世界的貯蓄過剰とアメリカの経常収支赤字」で指摘したように、中国に代表される新興国の需要不足がマクロ・バランスを大きく変えている。マクロベースの供給過剰によって、先進国ではインフレや金利の高騰の可能性は少なくなった。かつて、ローレンス・サマーズ元財務長官がいった「長期停滞論」である。

 日本人は低経済成長と低金利は持続すると予想して「長期停滞論」を受け入れた。そして、昨今の異常な金融緩和である。誰のためかは、再三論じてきた。
 流動性の罠

 デフレの日本では、左派を標榜するメインストリームメディアが下部構造(マルクスは土台・Basisといった)の経済を蔑ろにして、「上部構造」である人種、ジェンダー等の「差別」に神経質になっている。

 一方、欧州の左派にとって、反緊縮は反戦、反核及び差別反対と両立している。豊かさを犠牲にして、「上部構造」のみを主張しているわけではないのである。

 日本のように、逆進性(所得と負担の割合が反比例する)の高い消費税を増税して、福祉や教育の無償化を主張しても(もともとスジ悪の政策ではあるが)労働者の支持を得ることはできない。
 欧州では、保守派が「財政赤字をなんとかしろ」といい、左派は「けち臭いことを言ってないで、政府は財政出動をして俺たちのためにお金を使え」という構図である。

 デフレの最中に「成長戦略」という生産性向上路線を進めば、生産性の高い企業だけが生き残ることになる。生産性向上路線については、松尾匡教授のアナロジーが分かり易い。
 「それこそ桶に水が足りない状況なのに、桶自体のサイズを大きくしようとしているようなものである」


 参考書籍等
 〔1〕産経新聞 東京朝刊「政治は国力低下に歯止めをかけよ」田村秀男の「経済正解」2021.11.6
 〔2〕産経新聞 東京朝刊━環境主義者は「アンチ資本主義」━E・ルトワック
2021.11.6
 〔3〕ブレイディみかこ・松尾匡・北田暁大「そろそろ左派は<経済>を語ろう」 亜紀書房 2018.6.20



 

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