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最新の「労働力調査」から、完全失業者数と完全失業率の推移である。10万円の特別定額給付金(新型コロナウイルス感染症緊急経済対策関連)が、「非常時対応」であることが確認できるだろう。
日本人の精神の退化について考えてみる。
その根源は、英文翻訳憲法の欺瞞とGHQ民政局の言論統制(江藤淳が「戦後三部作」で開陳している)にある。それらを源とした横田喜三郎等を頂点とする戦後利得者の傍流が、メインストリームメディアに巣くっている。
それにしても、日本人は、なぜ、ここまで頽廃したのだろうか。・・・を考えると、少なくとも、私は三島由紀夫に行き着く。
昭和43年から吹き荒れた「全学連共闘会議(全共闘)」の実力闘争は、2年遅れて地方大学にも波及した。私は、工業高校を卒業し、3年間の社会人生活を経て地方大学に入学した変わり種だった。とはいえ、経済的には既に親から独立していたので、ヘルメット姿の学生たちの行動が、「クラブ活動」のように思えた。
昭和45年は私が入学した年であり、学内で繰り返される「学園闘争」に辟易していた。
三島と森田必勝が自裁した11月25日は、頬にあたる風は冷たかったが、清く澄み渡った空気が心地よく、日差しが芝生を照らしていた。日溜まりで、練習後のひと時をチームメイトと団らんしていたその時、「三島が大変なことになっている」と一報がはいった。
当時、私は教材以外の本を読まなかったので、三島由紀夫について知ることは限られていた。気にはなっていたけれど、やがて、喉の小骨が取れたように忘れ歳月を重ねた。
おぼろげながら、状況が見え出したのは、小林秀雄と三島由紀夫の「美のかたち」という対談本を読んでからである。
「金閣寺」について書評・対談から
小林:つまり、あの人は才能だけだっていうことを言うだろう。何かほかのものがないっていう、そういう才能ね、そういう才能が、君のように並外れてあると、ありすぎると何かヘンな力が現れてくるんだよ。魔的なもんかな。きみの才能は非常に過剰ででね、一種魔的なものになっているんだよ。ぼくはそれが魅力だった。あのコンコンとして出てくるイメージの発明さ。他に、君はいらないでしょ、何にも。
秋山駿氏の解説から
余談になるが、小林氏はこの対話で、三島由紀夫にしきりに、「才能の魔」という警告を発している。才能の魔とは、つまり、才能を持っている当の主人を滅ぼすもののことだ。三島氏が抱いている生の「悲劇」のようなものを、早くに直覚したのであろう。
〔1〕
「果たし得ていない約束ー私の中の二十五年」は、保守系の人たちが繰り返し引用し、取り上げてきているが、末尾の数行だけなのでわかりにくい。
以下、その前段である。
二十五年前に私が憎んだものは、多少形を変えはしたが、今もあいかわらずしぶとく生き永らえている。生き永らえているどころか、おどろくべき繁殖力で日本中に完全に浸透してしまった。それは戦後民主主義とそこから生ずる偽善というおそるべき※バチルスである。
こんな偽善と詐術は、アメリカの占領と共に終わるだろう、と考えていた私はずいぶん甘かった。おどろくべきことには、日本人は自ら進んで、それを自分の体質とすることを選んだのである。政治も、経済も、社会も、文化ですら。
※バチルス:桿菌(かんきん、棒状・円筒形の細菌)のこと、転じて、物事につきまとい利益を奪い、害を与えるものをいう。
それよりも気にかかるのは、私が果たして「約束」を果たして来たか、ということである。否定により、批判により、私は何事かを約束してきた筈だ。政治家ではないから実際的利益を与えて約束を果たすわけではないが、政治家の与えるよりも、もっと大きな、もっともっと重要な約束を、私はまだ果たしていないという思いに日夜責められるのである。
〔2〕
尚、ギリシャのことわざの「健全なる精神は 健全なる肉体に宿る」は、「健全なる精神よ、健全なる肉体に宿れかし」が正しい訳らしい。三島由紀夫は、このことを意識していたようである。
戦後、日本の歴史観や宗教観に深く根差した思索は、むしろ文学者の側から示された。
小林秀雄、福田恆存、江藤淳のほか、戦中派として三島由紀夫と吉本隆明がいる。三島と吉本は、戦中派としての宿命を思想の核に置いた点で異彩を放っている。とはいえ、三島と吉本の政治的立場は明らかに異なる。吉本隆明が、正直にその衝撃の深さを吐露している。
≪三島由紀夫の割腹死で終わった政治的行為が、<時代的>でありうるかどうか、<時代>を旋回させるだけの効果を果たしうるかどうかは、だれにも判らない。三島じしんが、じぶんを正確に評価しえていたとすれば、この影響は間接的な回路をとおって、かならず何年かあとに、相当の力であらわれるような気がする≫
〔3〕
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産経新聞【三島由紀夫没後45年】等参考資料
【三島由紀夫没後45年(上)】
決起した元会員、貫く沈黙 肩の刀傷…今も悔いなく
https://www.sankei.com/premium/news/151122/prm1511220035-n1.html
【三島由紀夫没後45年(中)】
狙撃覚悟「建軍の本義」問う 元会員「森田さんがもちかけた」 文学ではなく行動に託す
https://www.sankei.com/premium/news/151123/prm1511230011-n1.html
【三島由紀夫没後45年(下)】
三島に斬られ瀕死の元自衛官「潮吹くように血が噴き出した」
https://www.sankei.com/premium/news/151124/prm1511240006-n1.html
三島由紀夫の檄文 「敢てこの挙に出たのは自衛隊を愛するが故」
https://www.sankei.com/premium/news/151122/prm1511220033-n1.html
三島由紀夫の遺書全文 「夢は、楯の会全員が一丸となつて、義のために起ち、会の思想を実現すること」
http://www.sankei.com/premium/news/151122/prm1511220034-n1.html
三島由紀夫と行動を共にした楯の会会員の証言集(裁判での発言や上申書)=敬称略
http://www.sankei.com/premium/news/151122/prm1511220032-n1.html
参考書籍等
〔1〕「小林秀雄対話集」講談社 2017.3.13発行
〔2〕三島由紀夫著「文化防衛論」ちくま文庫 2013.3.5発行
〔3〕富岡幸一郎著「最後の思想」アーツアンドクラフツ 2012.11.30発行