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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

ユートピアニズムからリアリズムへ

グローバリゼーションの終焉

 昨年のオールドメディアの惨状は、まさに末期的な様相を呈していて惨いものだった。「モリトモ」の隣接地の野田公園の問題、「カケイ」では獣医師連盟から献金を受け増設に反対した複数の野党議員、同じく自民党の石破氏の「石破四条件」と献金との関係、文科省汚職で暗躍した複数の野党議員、また、8月には関西の「某重大事件」等をことごとくスルーした。
 「オールドメディアは報道しない自由を行使する」と揶揄させるけれど、私は根源に歴史認識の貧困さがあると思う。リアリズムについて改めて考えさせられる。

 国際政治学の古典「危機の二十年」において、E・H・カーはリアリズムについていう。
 「
ユートピアン(※1)は、未来を見据えながら創造的かつ内発的な意志力によってものを考える。一方リアリストは、過去に根を下ろしつつ因果関係によってものを考える。あらゆる健全な人間行動、したがってあらゆる健全な思考は、ユートピアとリアリティの間に、そして自由意思と決定論の間にそれぞれバランスをとらなければならない。

 ※1 カーは理想主義(アイデアリズム)をユートピアニズムといった。そもそも、ユートピアは虚構を意味しているので、ユートピアニズムは「空想主義」、「夢想主義」のことであって、アイデアリズムとは区別すべきと考えていたようだ。
 第一次世界大戦後の二十年間における、ユートピアニズム(普遍的原理・自由主義)とリアリズム(普遍的原理には欺瞞がある・全体主義)という両極の対立が第二次世界大戦を誘発した。カーがいう、「
あらゆる健全な思考は、ユートピアとリアリティの間に、そして自由意思と決定論の間にそれぞれバランスをとらなければならない」というのは、第二次世界大戦に至った戦間期におけるこの対立からきている。

 いわゆる「平和ボケ」は、カーが「リアリストは、過去に根を下ろしつつ因果関係によってものを考える」というリアリズムが欠落して、ユートピアニズムに堕している。「誤った歴史観」の恐ろしさであるが、個人の問題で済まないだけに悲しいことだ。
 一部の日本人は、「敗戦」を「終戦」に置き換えることで「敗戦」を忌避した。自らが敗戦を乗り越えることなく、軍国主義悪玉論に乗っかり勝者の側にすり寄った。敗戦と向き合いリアリズムを失わなければ、これほど惨めな「平和ボケ」は量産されなかったはずだ。
 因みに、大東亜戦争を因果関係によって考えると入江隆則氏がいうように「終戦」で遮断されることはない。

 
私はナポレオン戦争と第二次大戦のアジア版としての大東亜戦争がさまざまの点でよく似ていると述べたが、メッテルニヒがつとに見抜き、グリエルモ・フェレーロ※2が後に論じた通り、フランス革命が撒き散らした毒素がヨーロッパの良き伝統を崩壊させた元凶だとも言えるのに対して、大東亜戦争で日本が撒き散らした種子の一つは、アジアを西欧の植民地から解放することだったのは確かだから、この点に限って言えば後者の方がはるかに高邁だったと言える。

 日露戦争以後陸軍の独走を許した政治の貧困には弁護の余地はないが、時々刻々に変化する世界情勢のなかで、昭和十六年十一月二十六日にアメリカ国務長官の「ハル・ノート」を受け取った段階で、東条の下した選択以外の選択があり得たとすれば、一応隠忍自重してよりよい時期を待つことになるが、石原莞爾が主張したように二十年から三十年自重した上で戦争になったとすれば、それは必然的に核戦争になるはずだから勝っても負けても何倍もの悲惨な状態となったであろう。

 日露戦争は無謀だったが止む得ず戦い、幸にして辛勝できた。大東亜戦争も無謀だったが止む得ず戦い、不幸にして勝てなかった。
 しかし東京裁判の弁護人清瀬一郎が述べたように、天皇の決断と数百万英霊の無言の圧力とによって、日本の”戦略降伏”はケスケメティ
※3が述べた通り、天皇という中核価値のみを護り、すべてを捨てるという世界の戦争史上例を見ない見事な降伏だった。

 しかも、日本は敗北したとはいえ、西欧が世界のすべてを植民地化しようとした十九世紀的構造を完全に覆したのであり、何度も言うが、この過程がなかったら近年のアジアNIESの擡頭という”世界史的現象は”絶対に起こらなかったはずである。

 〔2〕446~447頁
 ※2 グリエルモ・フェレーロ
 イタリア人作家でローマ史の大著がある。「権力論」において、正統君主制による伝統にこそ正しい権力の精神があるという。つまりは、「正統なる王党派という伝統の下で、それを伝えていくことにより正しい民主制と君主制が成り立っていくのが文明なのである」という。 
 ※3 ポール・ケスケメティ:ランド研究所 第二次世界大戦の日独伊を比較して戦争終結を論じた「戦略的降伏」がある。

 歴史とは因果関係の繋がりであるからして、「正しい歴史観」はリアリズムに、「間違った歴史観」はユートピアニズムになる。
 ユートピアニズムが席巻する日本では「インテリジェンス」は軽視され、生存本能ともいえる防衛の意識すら嫌悪する。尾崎秀實やコード・ネーム「エコノミスト」のようなスパイによる日本軍の南下情報によって、スターリンが極東の戦力をドイツ戦に振り向けて「独ソ戦」に勝利したという屈辱的な歴史すら等閑される。

 ユートピアとリアリティの間へ
 トランプ政権のインテリジェンス関係者と個人的なネットワークを持つ島田洋一福井県立大学教授は次のようにいっている。

 
今後、関係諸国の情報機関が、金正恩排除を目指した工作を進めていくとしても、日本は蚊帳の外に置かれます。それで微妙な情勢下、拉致被害者を救出できるのか。
 マイケル・ピルズベリー
※4という米中情報機関の連携の中心にいた人から聞いた話ですが、アメリカはこの何十年、日本よりはるかに多くの秘密情報を中国に伝えてきたそうです。米中はアフガニスタン・ゲリラに武器と情報を与え、ソ連の発電所を攻撃させるなど国際法違反の工作活動も行った。いわば、共犯関係にあったわけで、当然ディープな情報も交換する。
 一方、日本はきれい事しかしないから、きれい事以外の話はできないというわけです。

 〔3〕正論2017年7月号より引用
 ※4 ハドソン研究所中国戦略センター所長
 その著書「China 2049」には、 R・ジェームズ・ウールジー元CIA長官、民主主義防衛財団会長の次の言葉が添えられている。

 
本書が明かす中国の真の姿は、孫子の教えを守って如才なく野心を隠し、アメリカのアキレス腱を射抜く最善の方法を探し続ける極めて聡明な敵だ。我々は早急に強い行動をとらねばならない。

 「China 2049」から、「瓶の蓋」論の根源となったキッシンジャー氏のチャイナ訪問等について紹介しよう。
 1971年のキッシンジャー氏の歴史的なチャイナ訪問は、チャイナのほうからアクションがあったというのだ。チャイナはアメリカを「覇」とみていたが、通訳はそれを「リーダー」と訳したため、ニクソン政権はその後チャイナを軍事支援していくことになる。ピルズベリー氏は、アメリカを横暴な「覇」と見なす「覇」に込められたチャイナの反米タカ派の見解を知っていたなら、ワシントンは警戒したはずだという。
 しかし、第三次インド・パキスタン戦争の最中、キッシンジャー氏はチャイナに、インド軍の動向について機密情報を提供し、チャイナのパキスタン支援を認めたのである。そして、1972年1月、アメリカはチャイナと協力してソ連と対抗することを約束する。

 同年2月ニクソンと対座した毛沢東は、かつてソ連に対して演じたように、チャイナを支援と保護を渇望する無害で無力な嘆願者のように見せたのである。以降、チャイナはアメリカから数多の技術とスキルを獲得することを目指していく。アメリカは、チャイナが民衆の第一の敵と見なすダライ・ラマ14世に対するCIAの秘密支援を打ち切っただけでなく、台湾海峡の定期的なパトロールも中止した。

 尚、国際関係論におけるリアリズムとアイデアリズムの関係は、リアリズムでは「商業による平和(トーマス・フリードマン氏による「レクサスとオリーブの木」に代表される)が即座に否定され、アイデアリズムはリベラリズム(自由貿易を強く支持すため硬直化する)になる。

 最後にトランプ政権の国家通商会議のリーダーである、ピーター・ナヴァロ氏によるクラウゼヴィッツ流の箴言を紹介し、インド太平洋軍(在日米軍が所属)外5つの米軍基地で共有している「DIME」について触れておこう。

 
強い経済、優れた教育制度、安定した政治体制、豊富な天然資源、優秀な労働力を持っていても軍事力を持たない国は、悪意を持った軍事大国に対して完全に無防備だし、したがってたやすくその餌食になる。
 ピーター・ナヴァロ

 DIME
 Diplomacy=外交、Intelligence=諜報、Military=軍事、Economy=経済
 相互に連携して「航行の自由作戦」のバックボーンとなり、ピーター・ナヴァロ氏の「米中もし戦わば〔5〕」を貫く概念でもある。

 余談
 年末年始に数冊の本を読んだけれど、なかでも、川島博之氏( いずれも講談社・α新書)の、「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」と「習近平のデジタル文化大革命 24時間を監視され全人生を支配される中国人の悲劇 」の2冊は、学術的見地から分析したチャイナ本であり、少なくとも「戸籍アパルトヘイト国家・中国の崩壊」は、経団連のお偉方や関心のある方は是非読んでいただきたいものだ。

 また、渡邉哲也氏の新刊 「ゴーン・ショック! 事件の背後にある国家戦略と世界経済の行方 」も、進行しているトピックの分析でありとても参考になった。
 フランスは民間企業の株式を国が持つという半社会主義国であり、アメリカもフランスに対する警戒を強め、ブレグジット、米中貿易戦争の流れで、ゴーン逮捕が起きていると考えるべきだろう。
 ルノーではなく、株主であるフランス政府との戦いだ。東芝やシャープが餌食になり、日産は三菱自動車の株式を34%持っているので、ルノーが日産を統合すると三菱までフランスのものになってしまう。小が大を飲みこむチャイナバージョンであり、フランスとチャイナは同類なのだ。

 ゴーン氏は、レバノン、ブラジル及びフランスの三重国籍者であり、1年間を、フランス、レバノン、ブラジル、日本で暮らしていたという。日本では非永住者に該当すると思われるので、少なくとも国内源泉所得は課税されるだろう。
 とはいえ、世界を渡り歩いて納税をしない人(永遠の旅人・パーマネントトラベラー)がいるし、「税源侵食」と「利益移転」も非難され世界は脱グローバリゼーションへ向っている。この流れこそ、アイデアリズム(理想主義)からリアリズムへの転換なのである。

 
東京地検特捜部は21日、日産自動車元会長のカルロス・ゴーン容疑者(64)が自身や第三者の利益を図って日産に損害を与えていたとして、ゴーン元会長を会社法違反(特別背任)容疑で再逮捕した。
 会社法の特別背任罪の公訴時効は7年。逮捕容疑は10年以上前の08年10月の行為を含むが、ゴーン元会長は海外滞在歴が長いことから、特捜部は時効は成立していないと判断したとみられる。

 https://www.nikkei.com/article/DGXMZO39230900R21C18A2000000/

 
ルノー・日産問題に中国の影 仏大統領の呼びかけをスルー、官邸の本音は技術流出の阻止
 https://www.zakzak.co.jp/soc/news/190126/soc1901260003-n1.html



 参考書籍
 〔1〕E・H・カー著 原彬久訳「危機の二十年」2013.7.5
 〔2〕入江隆則著「敗者の戦後」㈱文藝春秋 2015.12.20
 〔3〕江崎道朗著「知りたくないではすまされない」㈱KADOKAWA 2018.12.19
 〔4〕マイケル・ピルズベリー著「China 2049」野中香方子訳 日経BP社 2015.11.4
 〔5〕ピーター・ナヴァロ著 赤根洋子訳「米中もし戦わば」㈱文藝春秋 2017.2.1


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