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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

ビットコインとブロックチェーン

全員で共有・無停止・改竄不可能・トレーサビリティー・低コストという革新技術

 消費税法では仮想通貨の譲渡は非課税扱いになった。
 支払手段の譲渡 平成29年7月1日以後、資金決済に関する法律第2条第5項に規定する仮想通貨の譲渡は非課税となります。
 https://www.nta.go.jp/m/taxanswer/6201.htm

 

 

 ならば、仮装通貨は貨幣といえるだろうか。
 貨幣には、交換手段、計算単位、価値貯蔵の三つの機能がある。仮想通貨のボラティリティの高さから計算単位(価値尺度)にはなりえないだろう。

 国家が課す納税義務の表示単位(円、ドル等)として通貨を法定し、その通貨を租税を払う手段として定める。この場合、通貨は最も有力な貨幣として流通し納税以外の目的のためにも使用されることになる。このように、「納税の義務という負債の支払い」であることから、信用貨幣論に立脚していて、かつ、貨幣の価値の源泉は国家権力にあるという表券主義を結合させた貨幣論を、国定信用貨幣論という。
 国定信用貨幣論からも、仮想通貨は明らかに貨幣といえるものではない。

 フィナンシャル・ニュースはジョセフ・スティグリッツ教授によるビットコイン(以下BTC)の悲観的な見方を伝えていた。また、ポ-ル・クルーグマン教授も、「BTCが経済的な取引に使えるという実証がされていない」と従来から批判をしているし、ロバート・シラー教授も「BTCや仮想通貨は失敗するだろう」と警鐘を鳴らしている。いずれも、ノーベル経済学賞を受賞した泰斗である。

 BTCは「サトシ・ナカモト」といわれる人物?が、2008年10月に「BTCのピア・ツー・ピア
型電子現金システム」という論文を、専門家のメーリングリストに配信したことから始まった。私は、この「サトシ・ナカモト?」という日本名と、上記グラフで明らかなように、債権大国・円のBTC法定通貨シェア57.7%という異常値との関連に興味をかきたてられる。とにかく、BTCの時価総額は15.6兆円なのである。
 
「P2P」と表記される、第三者を介さないで個人間で直接やりとりすることをいう。仮に、このシステムが普及すればアマゾン型システムは岐路に立たされるだろうといわれる。

 当初は暗号を使ってトークン(代用通貨)の取引をするという、ありふれたアイデアであったため注目されなかったが、「サトシ」の技術は従来の集中型・中央集権型と異なり、分散型取引台帳技術(Distributed Ledger Technology・DLT)と呼ばれる革新的な技術だった。
 10分間の取引内容を一つのブロックに格納し、そのブロックを時系列に並べて繋いだものがブロックチェーンである。この所有権が同じデータを、ネットワーク上のノード(個別のPC単位)と呼ばれる複数の人達が分散して保管している。このため、一つのノードのブロックチェーンが消えても、他のノードが同じデータを持っているためネットワークが維持されるというメリットがあり、なにより低コストである。

 ブロックチェーンの二つの特徴
 ①特殊なデータ構造
 元の取引データ(トランザクション)にハッシュ関数を掛けるとハッシュ値に変換される。また、ハッシュ値とハッシュ関数から元のデータの特定が困難という特徴がある。ハッシュ値は異なるデータから同じハッシュ値になることはなく、元のデータが変わればハッシュ値も変わり、改竄は容易く確認できる。

 前のブロックのハッシュ値がそれぞれのブロックに入っており、入れ子の関係になっている。したがって、ひとつのブロックのデータが変更されると、次のブロックに含まれているハッシュ値が変わり、次の次のブロック、次の次の次のブロックに含まれるハッシュ値も変わってしまうということだ。

 ②プルーフ・オブ・ワーク
 取引データをブロックに入れ、そのブロックをブロックチェーンの最後尾に追加する作業を「マイニング」又は「承認作業」という。マイニングに参加するノードを「マイナー」と呼び、ノードであればだれでもマイナーになれる。
 とはいえ、誰が新しいブロックを生成するかという、コンセンサスを得る必要がある。それが、プルーフ・オブ・ワーク(仕事の証明)といわれるコンセンサスアルゴリズムである。

 BTCでは、予めプログラムによって新規ブロックのハッシュ値は設定されている。このため、ブロック内のデータを調整して同じ値になるようにしなければならない。この調整に利用されるのが「ナンス値」である。
 しかし、ナンス値を見つけるには、一つの数値を総当たりで試していくしかない。マシンパワーの競争であり、一番初めに見つけたマイナーがナンス値をブロックに入れブロックの生成をすることができる。

 ブロックを追加したマイナーは、他のマイナーに自分が生成したブロックを追加してもらうよう依頼する。他のマイナーは、ブロックのデータにハッシュ関数を掛けて一定数のゼロが並んでいることを確認するだけなので、ナンス値を探すよりもはるかに簡単な作業で確認することができる。

 そして、全マイナーの過半数が正しいブロックとして承認すればブロックの生成が始まる。この一連の作業が、BTCでは10分間隔で繰り返されていく。したがって、ブロックチェーンのリスクは過半数のマイナーの造反しかないことになる。初期であればともかく、マイナーの数が多くなるとほぼ不可能になる。

 ブロックを生成したマイナーにはBTCが支払われる。2016年夏に25BTCから12.5BTCに半減し、2140年にはゼロBTCになるといわれている。
 このインセンティブによるコンセンサスアルゴリズムの継続には不透明なところもある。マイニング競争によるマシンパワー強化と増加する電気代は、半減していく報酬(送金の手数料もあるが)と両立し難いのではないだろうか。

 金は自然界に21万トンしかないといわれ、希少性に価値を内在させている。BTCの供給上限設定も2100万個であり、BTCの発行額は4年周期で半減するけれど、4年で生成されるブロック数は21万個というように、金本位制を連想させるキーが組み込まれている。
 供給制約のあるコインの需要が増えれば自ずとBTCの価値は上がる。ブロックの生成をマイニング(採掘)というのも意味深長ではある。

 2009.1.4、「サトシ」が2台のPCで初めて生成した「サトシ」と呼ばれる「創生期ブロック」には、本人から本人に送金された取引記録と共に次の付随情報が書き込まれている。
 「ザ・タイムズ 2009年1月3日 蔵相は銀行へ2度目の救済を迫られている」
 2008年のリーマン・ショック後、英国の二回目の銀行救済のことである。「国定信用貨幣」に対する「サトシ」の反抗からBTCは生まれたのではないかといわれる所以である。

 BTCの基幹技術であるブロックチェーンはインターネットに並ぶ革新技術といわれ、コンセンサスアルゴリズムも、BTCのように計算力(proof of work)によるのではなく、例えば保有コイン残高による(proof of stake)とか、特定の管理者による(PBFT)等選択肢もあり、守備範囲は更に広がるだろう。
 ブロックチェーンは「信頼のプロトコル」といわれ、大いに関心があるけれど、残念ながら私には追いかける能力がないし時間もない。

 ブロックチェーン」の台頭
 http://www.nttdata.com/jp/ja/services/sp/blockchain/latest/


 参考書籍
 森川夢佑斗著「ブロックチェーン入門」 ベスト新書 2018.3.1発行
 木ノ内敏久著「仮装通貨とブロックチェーン」日経文庫 2018.1.5発行 



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