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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

平成29年3月 経済情勢概観

H29.3期 決算業務報告書添付資料

 
 平成29年3月の短観によると、業況判断DIは円安による輸出の伸びや、インバウンドによる増収等のため、大・中堅・中小企業のすべてにおいて改善されています。
 とはいえ、今後については、デフレマインドは払拭されないままであり、特に海外要因に不安定事案が多く、エネルギー価格の上昇予測等もあり慎重な見方が多いようです。先行きに、かなりの企業が不安を持っていることが推察できます。


 
 景気動向指数CIはリーマンショック以降、政権交代による変動はありましたが、交代後現在まで極端な落ち込みは見られません。


 では、なぜ景気が上向きにならないのでしょうか、その背景について考えてみます。
 
 1994年は、クリントン政権によって最初の「年次改革要望書」が提示された年です。その後、規制緩和、行政改革、入札制度や行政慣行にいたるまで、産業、経済、行政及び司法等あらゆる分野に及ぶ様々な要求がアメリカによって繰り返され、日本型経営は変質し名目GDPは停滞します。

 冷戦の終結によりグローバリゼーションが喧伝され、企業経営はステークホルダー(利害関係者)重視から、ストックホルダー(株主)重視へ転換しました。さらに、自社株取得等の経営者へのインセンティブによって、株価や配当性向を重視する短期志向型になりました。
 企業会計も原価主義から時価主義になり、企業業績を株価の変動にリンクさせる国際会計基準を押し付けられます。さらに、平成15年より、上場企業は四半期決算の開示まで義務化されました。
 原価主義を採用していた日本企業は、長期的な視点の投資等が可能だったので、終身雇用が維持され順調な経済発展を遂げてきました。会計基準の変更(減損会計導入)は、バブル崩壊による含み損を抱えた多くの日本企業にとって、ハゲタカ・ファンドに餌を与えたことになったのです。
 ストックホルダー重視は、生産コスト圧縮のためオフショアリング(海外移転)を推し進め、国内のステークホルダーは無視されるようになりました。短期志向によって、株価収益率(PER)、自己資本利益率(ROE)及び株価純資産倍率(PBR)等が重視されました。
 例えば、「株価収益率=株価/純利益」は、(株価と同等の)投資資金を回収する年数なので、10であれば10年、5であれば5年で投資資金が回収できることになります。
「自己資本利益率=純利益/自己資本」は自己資本の効率であり、高ければそれだけ株式配当が期待でき、「株価純資産倍率=純資産/株価」は理論的には1を下回らないため、株価を意識せざるを得ず純利益確保に拘束されます。

 企業経営は、地域、従業員、取引先等の利害関係者から、株主に重きを置くようになりました。


 
 GDP(国内総生産)は、生産・分配・支出の三要素から算出され、いずれも同じ結果になります。これをGDPの三面等価といいますが、GDPは最終需要の総合計であり、経済主体(家計・企業・政府)が得た所得の総合計といえます。
 経済主体の変動を見るのがGDPデフレーターであり、「名目GDP÷実質GDPデフレーター」により算出されます。
 支出面から見たGDPを簡略化すれば、GDP=内需(個人消費、設備投資、政府による公共投資等)+「輸出-輸入」に収斂しますから、円高で輸入価格が下がりその結果、「輸出-輸入」が増えればGDPは増加します。このように、GDPデフレーターは経済主体の変動を見る指標なのです。


 
 内需GDPは名目GDPから純輸出を除いたものです。消費税増税による内需の落ち込みが明確に確認できます。名目GDPの増減は円高による輸入コスト軽減と共に、円安による輸出の増加という両面を見る必要があります。


 
 上記のグラフは、国債の償還までの期間(残存年数)の利回りをグラフにしたもので、イールドカーブといいます。縦軸に利回り、横軸を期間にしたものです。これにより、金利の期間構造(タームストラクチャー)をみることができます。
 将来の金利が上がると予想される場合には、償還までの期間が長いほど、イールド・カーブが描き出す曲線は、右上がりになります。これを順イールドといいます。金利が高くなる前に、長期間の借入れをしようとする人が増えるからです。


 雇用形態別雇用者数
 
      総務省統計局労働力調査より 2002年以降は四半期の平均値

 1984年2月の正規・非正規の比率は、84.7%と15.3%だったのですが、2016年10月~12月の平均は、62.3%と37.7%になりました。産業構造の変化によって非正規雇用が大幅に増えて、名目GDPが停滞する要因の一つになっています。


 
 このようにデフレ期の消費税増税は、消費を押し下げる要因になります。平成28年暦年ベースにおける、名目GDPに占める民間最終消費支出(民間住宅、民間企業設備除く)は56%なのです。消費が促進されば誰かの所得が増え、税収も増えるわけです。名目GDPと税収の相関は前期の業務報告書で述べたとおりです。
 プライマリーバランスの黒字化を財務省が固持しているため、思い切った経済政策が打てない状況なのです。

 単純化のため市場の国債を全て日銀が買い取ったと仮定します。政府と中央銀行(日銀)は親会社と子会社の関係なので連結すれば(これを統合政府といいます)、政府の国債(負債勘定)と日銀が保有する国債(資産勘定)は相殺されます。その結果、統合政府の負債として残るのは、日銀が発行した紙幣です。紙幣には「日本銀行券」と書かれているとおり、日銀の借用証書なのです。日銀は紙幣の発行により国債を取得しているのです。しかし、日銀の借入金は利息を支払わなくてもいいし、当然返済期限もありません。

 ユーロを選択したギリシャが破綻したのは、通貨同盟によりドラクマ(自国通貨)が発行できなかったからです。「国の借金がぁー」というような報道に紛らわされることなく、正しい経済の知識を身に付けたいものです。

 公共投資選択基準に費用便益分析(B/C)があります。公共事業の便益と費用を算定することにより、各事業の社会的な純便益を算出するものです。「イールドカーブ」が示すように、将来の金利低下が見込まれ財務コストが逓減しているわけですから、公共工事等の選択範囲が広がる絶好の機会だと考えられます。
 トランプ大統領の積極的なインフラ投資を、是非日本でも実現していただきたいものです。



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