本文へスキップ
中小企業の皆様と共に歩みます      

TEL. 089-933-3140

〒790-0038 松山市和泉北4-1-22

税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

天を欺きて海を渡る

ユートピアニズムとリアリズム

 ・・・それは、“平和ボケ”は今も「まったく変わらない」という点だ。今朝、各紙に目を通していたら、朝日新聞の「天声人語」に目を吸い寄せられた。そこには、こう書かれていた。
迷惑千万な隣国への「怒り」は、尽きることがない。それでも「冷静さ」は併せ持ちたい。始めなくていい戦争を始めてしまった経験が、人類にはいくつもある〉
 北朝鮮ではなく「日本人が敵」だった 2017.09.04 より
 
http://www.kadotaryusho.com/blog/index.html 

 E・H・カーは理想主義をアイディアリズムでなく、ユートピアニズムといって、1919から1939の20年間を「危機の二十年」において論じた。現実主義の対比として理想主義を考える時、ユートピアニズムが持つ語感をイメージすると分かり易い。理想主義への偏在が第二次世界大戦を誘引したのだ。

 カーはいう、ユートピアンは未来を見据えながら創造的内在的な意志力によってものを考え、リアリストは、過去に根を下ろして因果関係によってものを考える。しかし、健全な思考はユートピアとリアリティーの「間」にあって、自由意思と決定論の「間」でそれぞれのバランスをとらなければならないのである。
 因果関係を拒んではいけないし、無条件に受け入れてもいけない。ユートピアンの典型的な欠点は無垢な事であり、リアリストのそれは不毛なことである。

 東西冷戦の現実主義時代を経て、冷戦後を支配したのも理想主義(グローバリズム)である。やっかいなのは、グローバリズムが特定の者の実利という標的を衣で包んでいることであろう。
 ダニ・ロドリック教授に倣えば、(ハイパー)グローバリゼーション・民主主義・国民国家(国民民主主義)の三つは同時に満たすことはできないのであり、それは、次の三つの選択肢のうち③しかないのである。
 ①民主主義を制限して、グローバル経済が生み出す経済的・社会的な損害を無視する。
 ②国家主権を犠牲にして、グローバル民主主義に向かう。
 ③グローバリゼーションを制限して、民主主義的な正統性の確立を願う。
 畢竟、現実的な選択は理想主義と現実主義の「間」にある、ということだ。

 左翼論壇の薄気味悪さは、この「間」を無視していることである。なぜならば、クラウゼヴィッツがいうように、「戦争とは他の手段を持ってする政治の実行」であり、戦争は政治に従属的なのである。戦争は、地政学的要因、確証破壊戦略等によって抑制されるからである。

 チャイナには「天を欺きて海を渡る」という古い格言がある。兵法三十六計のなかにあり、ありふれた風景に隠れて敵の油断を誘うという意味であり、戦いに巻き込まれていることさえ気づかせないで敵を倒すことを意図している。
 上記の「天声人語」氏の、ユートピアニズムと対比してみればいいだろう。チャイナに理想主義はなく、現実の「容赦のない競争世界における生存競争」のなかで、ダーウィンの「適者生存」の概念が支配している世界である。

 チャイナでは、中国工商銀行、中国農業銀行、中国銀行及び中国建設銀行が、4大銀行といわれ、これらの銀行だけでチャイナの総資産の8割を占めている。
 2010年7月15日に中国農業銀行が上海市場に、16日には香港市場に上場され4大銀行が全て上場された。約13,000社の国営企業も民営化を騙っているが寡占化が凄まじい。国有企業の民営化とは、ロシアのような完全民営化と異なり、市場を利用した特定の者による株式売買による寡占化のことである。
 2016年10月1日からは人民元がSDR(特別引出権)通貨となった。とはいえ、認定条件の「完全変動相場制」は等閑され、相変わらずドル・ペッグ制が死守されているのだ。世界金融のトリレンマは完全に踏みにじられ、資本主義のいいとこどりをされている。

 マイケル・ピルズベリー氏の「China 2049」によって暴露されたチャイナの世界制覇100年戦略は、透徹したリアリズムでありユートピアニズムと対極をなしている。この二つに「間」は存在しない。そのチャイナに三戦(世論戦、心理戦、法律戦)を一方的に仕掛けられ、防戦さえままならない。
 加えて、北朝鮮という独裁国家が「核」を持とうとしている極東の緊迫の中で、「もりかけのソバ問答」等に明け暮れ、瑕瑾の比較的少ない内閣を批判するクチパクの合唱をしているのが日本の”平和ボケ”である。

 「天を欺きて海を渡る」戦略国家の手先といわれても仕方なかろう。


 参考書籍等 
 ・E・H・カー著「危機の二十年」原彬久訳 2013.7.5
 ・中野剛志著「世界を戦争に導くグローバリズム」2014.9.22
 ・ダニ・ロドリック 著 「グローバリゼーション・パラドクス」
  柴山桂太/大川良文 訳 白水社 2013・12.1
 ・マイケル・ピルズベリー著「China2049」
  野中香万子/森本敏訳 日経BP社 2015.11.4
 ・宮崎正弘の国際ニュース・早読み <<中国の経済改革は進んでいるのか、逆方向に暴  走しているのか ?
  
http://melma.com/backnumber_45206_6579761/



ナビゲーション