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敗戦と日本人



八月十五日を迎えて

 自民党の二階俊博幹事長は10日、中国の程永華駐日大使と党本部で会談し、尖閣諸島(沖縄県石垣市)周辺で中国公船が相次いで領海に侵入していることへの懸念を伝えた。程氏側は「真摯に対応する」と応じ、両国が「円満な話し合い」に向け努力していくことで一致した。
 二階氏は会談の冒頭「家庭内でもぎくしゃくすることがあるわけだから、国と国(の関係)なので当然ある。政治の側がそれを乗り越えていくだけの度量と見識がなくてはならない」と強調した。

http://www.sankei.com/politics/news/160810/plt1608100015-n1.html
 
 およそ、政治家とは思えない二階氏の発言は、本意でないことを願わずにはおれまい。ある意味、極めて日本人的ともいえるけれど、リアルポリティックスの欠片もないものである。利害の対立する国々の関係をここまで矮小化してしまえば、私利私欲で政治をしているといわれても仕方なかろう。

 日本人の忍耐強さを、寺田寅彦は「災難飢餓」といった。日本列島はユーラシアプレートと北米プレートの上にあって、そこに太平洋プレートとフィリピンプレートが潜り込む不安定な構造になっていて地震が多い。また、背骨のような山脈が太平洋側と日本海側を分断して、河川は短く急流で氾濫を繰り返す。「やませ」のような冷たい北東の風による冷害、複雑な地形が生む「つむじ風」、豪雪による災害等も多く、日本はまさに災難のデパートである。

 もし、日本に災難がなくなれば、米や野菜がなくなるのと同じように、日本人は死滅するのではないか。寺田寅彦は、災難を避けがたいものとして受け入れ、「災難の進化論的意義」として、「災難飢餓」といったのである。
 このように、「災難飢餓」は逆説的なのである。地震も火事も、台風も洪水も、豪雪も冷害も、敗戦もそれはそれでいいではないか。財産も家族も、あらゆるものを失い、飢えに苦しみ悶え、それを受け入れて逞しく「災難」を食ってきたのが日本人だというのである。
 災害の少ないヨーロッパでは、建物等は人が壊さないかぎり存続する。存続するから、保存しようとして景観を大切にする「積み重ねの文化」が育った。日本は、人の意志に拘わらず災害により破壊され、流出してしまう。自然の猛威に抗う術もなく、「変わりゆく文化」になった。移ろいゆく四季を愛で、伊勢神宮にみられるような建替えの文化が育ったのである。

 「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。よどみに浮かぶうたかたは、かつ消えかつ結びて、久しくとどまりたるためしなし。世の中にある人とすみかと、またかくのごとし」
 鴨長明の「方丈記」の一節が、変わることを是とする死生観をよく表している。

 とはいえ、風土が育んだ日本人の忍耐強さは、リアルポリティックスでは弱みになる。「
政治の側がそれを乗り越えていくだけの度量と見識がなくてはならない」などといっていたのでは、チャイナの餌食となろう。

 「変わりゆく文化」を持つ日本人は、「敗戦」のショックを「終戦」に言い換え、水に流してしまったのではないだろうか。
 袖井林二郎著「拝啓マッカーサー元帥様―占領下の日本人の手紙」によると、 マッカーサーを神の如く崇めたものや、「偉大なる解放者」等といったマッカーサー宛ての手紙が50万通もGHQに届いたそうである。ここまで変わらずともよかろうに、と思うけれども。 

 GHQによる日本解体が成就したのも、敗戦利得者が跋扈してきたのも、御注進ジャーナリズムと反日勢力が合体できたのも、また、愛国心を古臭いファシズムの残骸のように忌避してきたのも、敗戦に立ち向かうことなく、皮相的な「変わりゆく文化」を受け入れてきたからではないだろうか
 かくて、歴史は分断され、根なし草が蔓延るようになってしまった。「災難飢餓」、「敗戦飢餓」と対極の、日本人に非ざる道を歩んできたといえる。
 
 日本人を日本人たらしめたのは、「災難飢餓」なのだということを、敗戦の日の「八月十五日」には噛みしめたいものだ。
 敗戦を受け入れ敗戦と対峙していれば、真珠湾攻撃をスネイク・アタックにしてしまった外務省の怠慢は糾弾されていただろう。なぜ支那事変が長期化したのか、石原莞爾や仲小路彰のような天才的な戦略家の主張をなぜ等閑したのか、漸減邀撃作戦を放擲してなぜ太平洋にまで戦線を拡大したのか等々、「敗戦飢餓」として食うべき食材が数多あるだろうにと思う。
 21世紀における最大のリスクを抱える極東では、「災難飢餓」ならぬ「敗戦飢餓」でありたいものだ。


 参考文献
〔1〕大石久和著「国土が日本人の謎を解く」産経新聞出版 H27.8.24

〔2〕藤井聡著「救国のレジリエンス」講談社 H24.2.20 





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