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税理士・社会保険労務士
青山税理士事務所
  

反グローバリズム


歴史的なパラダイムの転換

 「予想を覆したから衝撃だった」というのも、各社はヒラリーが勝つと見込んで予定原稿を用意していたからで、トランプ勝利の予定草稿がなかった。外務省高官は直前にも「接戦ですらない」と吐き捨てていたという。外務省が国連総会出席の安倍首相とクリントンとの会談しか設定していなかったのも、その現れである。つまり日本政府はトランプを無視していたことになる。
 それにしてもBREXIT(英国のEU離脱)の時も直前まで外務省は「離脱はない」と首相に進言していた。これで二回連続の大失敗。外務省の情報収集能力に致命的欠陥があるのではないか。

 https://melma.com/backnumber_45206_6446411/

 外務省の怠慢は、真珠湾に始まり、いわゆる南京事件や慰安婦問題における「事なかれ主義」、昨年の70年談話及び日韓慰安婦合意等に通底する独立自尊の欠落、そして今回の軽挙を加えると、そこに救いようのない頑迷固陋を感じる。硬直的な軍務官僚によって、破滅へと導かれた東亜戦争が彷彿として甦る。

 ネタニヤフ・イスラエル首相は、訪米時にちゃんと二人に会ったそうである。トランプ氏に会えないのであれば、二人とも会わない、これが外交というものだろう
 トランプ氏はグローバリズムの尖兵であるマスメディアと戦ったのであり、私のような市井の人間でも、今回の結果は「歴史的なパラダイムの転換」だということはわかる。
 「ヒラリー氏の否定」や「BREXIT」は、グローバリズムに対する庶民による自己防衛の発動なのだが、おそらく、外務省は今後もこの本質に気づかないであろう。拙速なTPP承認決議を強行した安倍内閣とて同根である。

 2012年12月、アメリカの「国際情報会議」の報告書「グローバルトレンド2030」は、現在を次のように俯瞰している。
 現在は、1815年(ナポレオン戦争終結⇒イギリスの覇権確立)1919年(第一次世界大戦終結⇒イギリスの凋落)1945年(第二次世界大戦終結⇒東西冷戦)及び1989年(冷戦終結⇒グローバリズムの台頭)と同等の、世界史的な一大転換期にある。
 世界史的な一大転換期とは、1919年から1939年の20年を経て、自由放任という理想主義が破綻したように、1989年から2009年の20年を経て、リーマン・ショックによりグローバリズムという理想主義が破綻しているということである。
 2009年以降、アメリカではオフショア・バランシングという軍事介入の縮小を提唱する現実主義が台頭し、
理想主義から現実主義へ、既にパラダイムの転換が始まっている。
 〔1〕参照

 トランプ氏の勝利は、パラダイムの転換の顕現であって、グローバリズムの終わりの始まりなのである。上記のコラムで、宮崎正弘氏も触れているとおり、グローバリブムの尖兵である日経新聞の周章狼狽をみればわかるだろう。
 グローバリズム路線を直走る安倍内閣とて、五十歩百歩である。

 
「革命」と呼んでもいいだろう。米国民は過激な異端児に核兵器のボタンを預け、経済と政治の変革を託した。その衝撃は欧州連合(EU)からの離脱を決めた英国民投票の比ではない。
 
http://www.nikkei.com/article/DGKKASGM09HCP_Z01C16A1MM8000/

 日経新聞のようなグローバリズムの尖兵が、姿を変えて国民を誘導してきた。エマニュエル・トッド氏の箴言に耳を傾けるべきである。

 
いま国家の中枢の人々の間では、たしかに新自由主義的政策、新自由主義的なものの見方が支配的だと思いますが、彼らは二種類に分類できます。一つは、本当に自由貿易・市場至上主義を信じている人々。
 ・・・ところが、もうひとつ別のタイプがある。・・・新自由主義を信じているようにみせて、実はそんな考えはなにもない。特定の企業や組織の利益を図るために、国家のさまざまな機構を用いる人たちです。

 〔2〕32〜32頁

 著作を巡る剽窃問題をものともせず、アメリカの方針に追随して主張を変え、りそな銀行破綻処理や郵政民営化等によって外資に巨利を提供した竹中平蔵氏を思い起こせばいいだろう。
 〔3〕参照

 国際政治学の古典といわれているE・H・カーの「危機の二十年」は、1939年第二次世界大戦の直前に発表され、戦間期(第一次世界大戦から第二次世界大戦まで)における国際政治のパラダイムを、
理想主義と現実主義の対比により明らかにした。戦間期を支配した理想主義の破綻が第二次世界大戦を誘発したのである。
 E・H・カーは、戦間期を支配していた自由放任という理想主義が破綻したメカニズム次のようにいう。

 
資本と労働の関係と同様、国際関係においても自由放任主義は経済的強者の楽園である。国家統制は、保護立法の形であれ保護関税の形であれ、経済的弱者によって行使される自衛の武器である。利益の衝突は事実として存在するのであり、避けられないものである。こうして問題の本質はすべてこれをごまかそうとする試みによって歪められるのである。
 〔4〕128〜129頁

 では、グローバリズムという理想主義の本質とはなんであろうか。
 
理想主義は、理性によって発見できる普遍的な道徳の「原則」が存在するものと信じ、世界はその原則に向かって進歩すべきものと考える。その原則とは、時代や状況によって変化することのない固定的なものである。その意味で、理想主義の思想は絶対的・静態的な性格を有する。
 これに対して、現実主義はもっと動態的であり、相対的であると「カー※」は言う。現実主義者にとって、何が正しい理念なのかは、時代や環境の変化とともに変わるものである。現実主義者の思想はプラグマティックなものであり、常に目的志向的である。その「目的」とは、普遍的な善ではない。あくまで「国益」である。

 ※E・H・カー
 〔1〕42頁

 理想主義が目途とする国際的な均衡は、絶大なパワーが存在してこそ維持される(※下記参照)。戦間期にイギリスの覇権が崩壊し、理想主義による均衡が壊れたように、今度はアメリカという覇権国家が衰退し、理想主義による均衡が崩れてきている。
 現在は、「グローバルトレンド2030」が予見するパラダイムの転換期にあるというわけだ。「平和ボケ」に感けるわけにはいくまい。
 生産手段の社会化を綱領に掲げる共産党や、お花畑の民進党の妄言と付き合っている時間はないのである。


 
参考
 チャールズ・キンドルバーガー氏とロバート・ギルピン氏(下記参照)が提唱した「覇権安定理論」による。

 
※ロバート・ギルピン
 伊藤貫氏によると、ギルピン氏は経済学の数理モデルもきっちりと理解した国際政治学の異才で、権力欲や自己顕示欲の薄い泰斗のようだ。ギルピン氏は、帝国や覇権国家が衰退し、野心的な勢力圏拡大の国家戦略が失敗するメカニズム、@→A→Bを詳らかにしている。

 @帝国(覇権国)の経済成長のスピードは、必ず鈍化していく。帝国をキャッチ・アップしようとする後発国(挑戦国)の経済成長率は、先発の帝国(覇権国)より高い。・・・チャイナを見ればいいだろう。
 A勢力圏をひたすら拡大しようとする帝国主義的(覇権主義的)な国家戦略には、「限界効用の逓減(勢力拡大の初期はコストの逓減現象がみられるが、ある時点を過ぎると利益よりコストが急速に上昇するU字カーブになる)という現象がみられる。
 B勢力圏拡大と覇権の強化を目指す帝国(覇権国)は、外交コストと軍事コストが過大な政策を実行するようになる。そのような帝国(覇権国)は、ほとんど必然的に困窮していく。
 〔5〕169~176参照


 参照文献
 〔1〕中野剛志著「世界を戦争に導くグローバリズム」集英社新書 2014年9月22日 第1刷
 〔2〕エマニュエル・トッド外著「グローバリズムが世界を滅ぼす」文春新書 2014年6月20日 第1刷
 〔3〕佐々木実著「市場と権力」轄u談社 2014年2月3日 第4刷
 〔4〕エドワード・ハレット・カー著「危機の二十年」原彬久訳 岩波文庫 2013年7月5日 第5刷
 〔5〕伊藤貫著「自滅するアメリカ帝国」文春新書 2012年11月25日 第2刷。



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