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株式会社アスキス

平成26年3月 経済情勢概観

H26.3期 決算業務報告書資料済情勢概観

  G-1
   

 昨年4月、日本銀行(以下日銀)は金融政策決定会合後、マネタリーベースを2年で2倍にする政策を発表しました。
 G-1は、マネタリーベース(平均残高)の推移です。マネタリーベースは現物のお金のことであり、実際は日銀券発行高(紙幣)、貨幣流通高(硬貨)及び日銀当座預金の合計額になります。
 日銀の量的緩和とは、日銀券発行高や貨幣流通高を直接増やすのではなく、金融機関の所有する国債等を日銀が買取り、日銀当座預金残高を増やします。日銀当座預金は、金融機関の日銀への預金であり、日銀にとっては負債になります。

平均残高の比較     単位:兆円(端数四捨五入) 
   マネタリーベース 日銀当座預金 
 平成25年3月  135  47
 平成26年3月  209  118
 増加額   74  71

 日銀当座預金残高は、企業の資金需要が旺盛であれば、銀行借入が活発になり減少します。上記の表のように増加したマネタリーベース(74兆円)が殆ど当座預金に残っている(71兆円)ことは、お金が市場に出回っていないことを意味します。
 G-2
  

 G-2は、右Y軸に日銀当座預金÷マネタリーベースの割合を%で表示しています。1980年代から量的緩和政策前までは概ね10%前後で推移し、2006年3月の量的緩和解除(デフレ脱却を阻止した日銀の代表的な愚策の一つ)後現在まで、急激に日銀当座預金が増加しています。H26.3現在で、その割合は、56.5%になりました。
 超長期のデフレのなか、大企業等が内部留保を積み上げている現状では、借入してまでの資金需要はなく、また国民の消費意欲もそれほど上がっていません。消費税増税のための駆け込み需要は、確かに目立ちますが、民間の本格的な資金需要(金融機関からの借入れ)が伸びないと、デフレ脱却は難しくなります。

 次に、インフレ率を見てみます。
 G-3
  
            
 G-3のインフレ率(実線)は、四半期(三カ月)ごとのGDP(国内総生産)の対前年同期比の成長率(名目値及び実質値)から、四半期ごとのインフレ率(%)を計算したものです。
 縦軸のゼロから上(プラス)がインフレ率、下(マイナス)がデフレ率です。二つの大きなプラスの山がありますが、次のようにそれぞれ理由があります。

 国民経済計算では2005年を基準年として実質GDPを計算しています。新方式(連鎖方式)のデータは1994年4-6期からです。
 最初の山の1997年4-6期は、1997年4月から消費税率が5%に増額されたことによる駆け込み需要の反動であり、次の2008年10-12期は、2008年9月15日のリーマン・ブラザーズの破綻を嚆矢とする、世界的な金融危機の影響によるものです。

 以上の事由で、二つの山はともに実質成長率※が大きく落ち込んだ時期なのです。その他の四半期では、殆どの時点で成長率はマイナスになっています。
〔※インフレ率=名目GDP成長率−実質GDP成長率で算出されるため、名目GDP成長率がマイナスでも、実質GDP成長率がそれを超えるマイナスの場合、前年対比のインフレ率はプラスになります〕

 また、もう一つの破線のグラフはGDPデフレーターの推移です。GDPデフレーターは名目GDPを実質GDPで除した値であり、名目GDP>実質GDPであれば物価上昇、逆であれば物価下落です。上記のグラフからも長期に及ぶ物価の下落傾向が確認できます。

 最後に、マネーストック(MS)÷マネタリーベース(MB)=貨幣乗数を見てみます。マネーストックは、金融機関の信用創造機能により増加しますので、MS÷MBは「信用乗数」ともいわれます。
 マネタリーベースは、政府及び日銀から見て、経済のそれ以外の主体に対する政府及び日銀の債務であり、マネーストックは、金融機関から見て、経済のそれ以外の主体に対する金融機関の債務です。マネタリーベース(現物のお金)<マネーストックとなります。

 G-4の右Y軸が貨幣乗数です。景気が上向いて資金需要が伸びれば高くなります。
 G-4
  

 アベノミクスによる量的緩和にも拘わらず、貨幣乗数は大きく低下しています。ここに日本経済の、今後を左右する大きなポイントがあると思っています。

 
【日本経済新聞WEB(H26.4.11)に、フィナンシャルタイムズ(英)のマーティン・ウルフ氏による=[FT]ハイパーインフレの懸念は無知の思い込み=というコラム(翻訳版)が掲載されています。
 金融制度が実際にどのように機能するかについて七つの例を挙げているのですが、次にその一つを引用します。

 http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1101H_R10C14A4000000/

 
『中銀※1が資産を購入する量的緩和策(QE)は、広義のマネーサプライ※2を拡大する。つまり、市場に流通している国債を銀行預金と交換し、そのプロセスで準備預金を拡大することでこれを実施する。他の条件が同じなら、広義のマネーを増やすことになるが、貨幣乗数がほとんどないため、マネーサプライに対する影響はわずかとなる可能性があり、実際に最近ではそうなっているQEは主に資産の相対価格、特に金融資産の価格を上昇(利回りは低下)させるゼロ金利下では通常の金融政策はもはや効果がないため、中銀は様々な資産の利回りを下げようとしている
 これは理論上の話にはとどまらないため、金融制度を理解しておくことは非常に重要だ。ハイパーインフレという根拠なき懸念を排除できることが一つの理由だ。中銀がマネーの量を増やしすぎるとハイパーインフレが起こる可能性はあるが、ここ数年は市場に出回るマネーはむしろ増えていない。貨幣乗数がほとんどないため、状況が変わる理由がないのだ
 さらに大きな理由は、利潤を追求する民間企業にマネーを供給すると請け負うだけが、唯一の金融制度ではないからだこれは最善でさえないかもしれない。実際に、国が直接マネーを作り出すことに賛成する声もある
 ※1中央銀行/日本では日銀
 ※2マネーストック

 このコラムの引用の最後、「国が直接マネーを作り出す」とは、公共投資を指しているのだろうと思います。上記のグラフの貨幣乗数の落ち込みも、この引用部分だけで説明できます。】
 
以上、【】の部分は、報告書の原本ではリンクが貼れないため省略しています。

 日本は今、「デフレは貨幣的現象である」という、マネタリズムが政策を支配しています。仮にこのまま、量的緩和のみでデフレが脱却できるという路線を進めば、極めて危険な状況になる可能性があります。
 デフレとは資本主義の病であり、消費や投資が萎んでしまい、景気動向は、上記G-3のGDPデフレーターのようなイメージになります。
 アベノミクスの第一の矢と第二の矢により、株価、失業率及び倒産件数等の改善は見られますが、2013年10-12期の対前年同期比の実質GDP成長率は0.2%(速報値)と、大方の予想を大きく割り込みました。
 この日銀当座預金を政府が吸い上げ、公共投資として産業流通にお金を回すのが財政政策です。しかし、財政均衡の圧力(マネタリズム)に押され、補正予算も4.5兆円減少しました。
 現実は、デフレ脱却には程遠い状況なのです。消費税増税による需要収縮予想額は8兆円とも言われています。今後の経済政策の一つ一つが、私たちの事業に密接に関係してきます。注意深く動向を見ていく必要があると思います。